「ACLは視界に入っていたか?」FIFAクラブW杯1回戦 サンフレッチェ広島-オークランド・シティ

今年のJ1を優勝した広島が、開催国代表としてクラブW杯の1回戦として登場したわけだが、アマチュアのニュージーランドクラブであるオークランドに、青山の無回転ミドルによる1点だけで何とか面子を保つ辛勝を飾った。
まあ、こういう一発勝負の大会における初戦で、ホームチームが緊張と負けられないプレッシャーで格下相手にしょっぱい試合をするのはW杯でも当たり前に見られる光景で、この内容と結果自体をことさらどうこう言うつもりは無い。
ただ、当然ながらJ1優勝チームとしてACLを勝ち抜く事を義務付けられているチームにとっては、CWCというのは普段戦っているJリーグとは全く違うカラーやスタイルを持った外国チームとの対戦経験を積める貴重な機会であるわけで、この試合では個人的に、広島がその点にどう対処して行けるかという部分に注目していた。
そして案の定、前半は絵に描いたような苦戦。ほぼゴール前に9人を並べて高く分厚い壁を作るオークランドの前に広島はほとんど決定機を作る事ができなかった。理由は簡単で、相手の身長と長いリーチの前に、いつもは通るはずのパスが通らず、結果的には慎重になりすぎて、余計に守りを固める相手に遅攻ばかりしてしまった事。
一般的に、高さはあるがスピードに欠ける守備陣には、単純に裏を取る攻撃とパスを出せば良いと思われがちだが、少し物理的に考えてみれば分かるのだが、守備の高さが普段の相手よりも高くなれば、裏へと出すパスもいつもより高く蹴るか強く蹴るかしないと引っかかってしまうわけで、高いと今度は落ちて来るまでに時間がかかって守備が追いつくし、強ければ今度は裏抜けした選手が追いつけないか、GKまで行ってしまう。
ドリブルやカウンター主体のサッカーに比べ、パスサッカーは出し手と受け手のタイミングが合わないといけないために、この「いつもと少し違うプレイ」が大きなミスマッチへと増幅されてしまう。高さだけではなく、プレッシングの早さやボディコンタクトの強さ、ピッチの粗さに対して日本サッカーが弱いのはそういう面が大きいと言える。
そういう意味では来期のACLに向けて不安になった前半だったが、後半になってちゃんと切り替えてきたので少し安心した。おそらく監督から指示があったのだろうが、見るからにミドルシュートの機会を増やしてきたし、精度やタイミングを見てではなく、とにかく早いタイミングでボールを前に送り、相手の守備陣が形を整える前にクロスを入れて来た。これが青山が決めた決勝点につながる要因になった事は疑いない。
とは言え、オークランドは守備こそ強いが早いカウンターに持ち込む形は全く持っておらず、後半のように勢い重視で早く攻めているだけだと、次のアル・アハリには痛い目にあうだろう。次はこの経験を活かして最初からノビノビ、そしてリスク管理もしっかりした戦いを見たいものである。