サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「岡崎がレスターを変貌させた、たった2つのポイント」イングランド・プレミアリーグ第37節 レスター・シティ-エヴァートン

月曜日に2位のスパーズがチェルシーに引き分けてしまったため、ヴァーディ宅で優勝の瞬間を迎えてしまったレスター。土曜日のホーム最終戦は、入場時にエヴァートンの選手に拍手で出迎えられる壮大なパーティ会場になった。

しかし先発メンバーは出場停止のドリンクウォーターとフートに代えてキングとヴァシレフスキが入った以外はいつものメンバー、そしてサッカーの内容もいつものレスターで、開始6分にヴァーディがいつものようにあっさり得点を決めると、エヴァートンはすっかりパーティの引き立て役となり、終わってみればプレミア王者にふさわしい3-1の圧勝となった。

スタッツも内容を裏付けるように、エヴァートンのシュート数が9なのに対し、レスターのシュートは実に33本と、選手の質的には引けをとらないはずのエヴァートンに対して、まるでビッグクラブ並の攻撃力で圧倒してしまっている。が、ボールポゼッションでは逆にレスターのほうが41%と少なくなっている事に驚かされる。

カウンター攻撃が主体のチームであれば、勝った試合で相手よりポゼッションが劣ることは珍しくないが、コーナーキックの数も12対4で圧倒していて、内容的にもほとんどレスターが攻撃していた試合でこのような数字になる理由は、ひとえにレスターというチームの球離れの良さにある。

レスターの場合、マイボールになった瞬間に必ずヴァーディやマフレズ、オルブライトンがスペースに走りこんでおり、DFやボランチが迷いなくそこにパスを出している。そして相手がスペースに走る選手を警戒すると、今度はセンターにスペースが出来て岡崎がポストプレイから前を向き、カンテがドリブルでボールを確実に相手陣内まで運びこむ。この連動があまりにスムーズなので、SBがいちいち上がって攻撃に絡む必要がなく、それが守備の安定にも繋がっている。

対してエヴァートンは、マイボールになっても各選手がボールの出しどころを探し、こねた挙句にバックパスをしてスピードダウンする場合が非常に多い。前線へボールを送れないので、仕方なくSBが上がってサイドでボールの中継点になろうとするのだが、今度はその空いたスペースをレスターに使われてしまうという悪循環。レスターと全くの正反対である。

そしてレスターの凄いところは、誰が出ても同じ動きが出来ているところだ。確かにヴァーディのスピード、マフレズのドリブル、岡崎のチェイシング、カンテのボール奪取力は誰にも真似は出来ないが、スペースへの動き出しやボールを奪われた後のプレスバックは誰でも同じように出来ている。だから、スタメンが少々欠けてもチーム力が落ちないのだ。

ただシーズン序盤は決してそうではなかった。ヴァーディは裏に飛び出すだけで中盤をサポートせず、マフレズはセルフィッシュなドリブルだけで守備に戻らないし、ウジョアもトップ下で突っ立っているだけ。岡崎とカンテだけが必死で走り回って何とか守備を支えていた時期もあった。しかし今は全員献身的に守備をこなしている。

そういうチームを作り上げた一番のポイントは、やはり岡崎の存在にあったのではないかと思っている。レスターとしては高額な移籍金でやって来たブンデスリーガのストライカーが、誰よりも率先してスペースへと走り、プレスバックで懸命にチームを助ける姿を見せつけ、それをラニエリが規範として褒める姿勢を見せた事、何よりそれが結果に表れたことで、全員がこの道を進めば良いのだ、という確信を得たのではないか。

面白いもので、今の岡崎はあまりスペースに走らず、自らはバイタルエリアで細かく動いてボールを受け、反転からキーパスを出してゴール前に飛び込む仕事が多くなっている。スペースへと走る動きは他の選手がほっといてもやってくれるので、”先生役”は卒業してよりチームの為に必要なプレイをこなしているように見える。

チーム全員が献身的に攻守で働くようになると、それはすなわち岡崎という選手のチームにおける相対的な価値が落ちるという事でもある。スピードや高さではヴァーディやウジョアには勝てないだけに、岡崎も新しい価値の創造に必死なのだろう。

レスターの来期はCLとリーグとの並列で疲弊が心配されているが、岡崎がもたらしたチームスピリットを全員が共有し、正しい切磋琢磨による競争が行われていれば、それほど心配する必要な無いのではないか。そういう確信が持てるエヴァートン戦であった。

モバイルバージョンを終了