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「香川の大活躍を陰で支えたのは、アウグスブルクのお粗末過ぎる戦術であった」ドイツ・ブンデスリーガ第10節 ドルトムント-アウグスブルク

香川が1試合で3アシストという、ある意味ハットトリックよりも難しい快挙を成し遂げ、現地メディアから大絶賛を受ける結果になったアウグスブルクとの試合。生放送がフジテレビTwoというあからさまな嫌がらせのために後日観戦となってしまったが、改めて試合を見てみると「これではドルトムントに好き放題やられても仕方ないな」と思わざるをえない、アウグスブルクの戦術無策ぶりが際立っていた。

まずアウグスブルクのフォーメーションが、ゾーンの4-2-3-1であるという事が既に間違っている。ドルトムントに代表されるポゼッション4-3-3(4-1-4-1)は、ゾーンの4-4-2(4-2-3-1)を打ち破るために編み出されたような戦術で、このマッチアップだとドルトムントのSBが上がればインサイドハーフが、インサイドハーフが上がればSBがほぼフリーになってしまう。そしてウイング、インサイドハーフ、SBの3人で、相手のサイド2人に対して数的優位が作れる。

この場合の対策として考えられるのは、攻撃のキーマンであるドルトムントの両インサイドハーフ、香川とギュンドアンにマンマークを付けるか、積極的なラインコントロールでFWを牽制しつつバイタルにプレスをかける事であり、特に前者はアウグスブルクのような弱者にとっては必須の手段だったはずなのだが、何故かアウグスブルクは緩いゾーンを作るだけで来てしまった。

そのため香川はゾーンの間で自由にボールを捌くことが出来、そうなれば和製イニエスタに好き放題やられてしまう事は明白である。典型的なのが前半21分のドルトムント2点目で、シュメルツァーがドリブルで持ち上がってロイスにパス、これで相手のサイドが中を警戒して香川が外へ流れるのを見送り、そこからターンで切れ込んでロイスがシュートと、3人のトライアングルを全く止める事が出来ていなかった。

後半開始早々にボバディージャが明らかなオフサイド見逃しでゴールした後はにわかにアウグスブルクが盛り返し、さらに30分の交代でアウグスブルクは4-1-4-1にし、ドルトムントに蹂躙されていたバイタルエリアをケアするようになったが時既に遅し。最後はアウグスブルクの集中力が切れ、ロスタイムには香川のゴール前での飛び出しに相手選手4人が釣られ、外でどフリーだったオーバメヤンにアシストして試合終了。

アウグスブルクは昨シーズンに大健闘してヨーロッパリーグ出場権を獲得し、ヴァインツィアル監督はドルトムントやシャルケの新監督候補に挙げられるぐらいだったが、とても同じ人が指揮していたとは思えない無策ぶりで、逆にドルトムントはこれで変な勘違いをしなければいいがと心配になるほどだった。

とは言え、香川が良いプレイをしていた事は間違いない。前の試合までは消極的なプレイが多くてバイタルへの侵入も数少なかったが、この試合は相手がザルだった面はあるがボールを積極的に引き出し、ゴール前で決定的な仕事を重ね続けた。ただ、相変わらず絶好機に得点は決められず。香川が決定力不足に陥る時はシュートに迷いと力みがよく見られるのだが、今回もそのパターンに陥っているようで少し心配。イニエスタ路線も悪くないけど、ジーコ路線は諦めてほしくないなあ。

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