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「知ったかぶりな戦術論を軽く吹っ飛ばす、にっくきアイツがやって来た」J1 2ndステージ第6節 アビスパ福岡-ベガルタ仙台

ここまで年間順位が9位と大健闘しているベガルタ仙台と、最下位の降格圏に沈んでしまっているアビスパ福岡の試合。

5月の1stステージでの対戦ではホームの仙台が福岡に2-0で完勝していたように、両チームの実力差は試合を見てすぐに分かってしまったのだが、ベガルタ仙台が夏場に調子を落とすのは良く知られた話であり、やはりこの試合でも平均気温の温度差が8度もある福岡の気候に仙台は飲み込まれてしまった。

最近のJリーグでは、前に見た大宮の渋谷監督などモダンなゾーン・ディフェンスを駆使する若手監督が台頭していると書いているが、仙台の渡邉晋監督も非常にモダンでアグレッシブな戦術を取っていて感心させられた。

フォーメーション的にはオーソドックスな4-4-2だが、ボランチの一角が降りて来てSBが上がる擬似3バックのような形でビルドアップする最近の流行を取り入れつつ、それに加えてボールサイドのSBがSHの位置まで上がり、逆に同サイドのSHが後ろに下がる縦のポジションチェンジでスペースを作ってボールを引き出す形と、ボールとは逆のサイドでSHが前線まで上がってサイドチェンジを受けるという、縦横に大きな展開を使うダイナミックな攻撃を仕掛けてくる。

その分、時折2バックのような形になってカウンターを受けたりするシーンもあるのだが、ウイルソン、ハモン・ロペスのブラジル人2トップのキープ力と個人突破力、SHであるリャン・ヨンギと奥埜の豊富な運動量で重心を前に保つ事が出来ている。

それに比べると福岡の方は、メンバーとフォーメーションを入れ替えたせいもあるのだろうが、4-4-2で構成されたゾーン・ディフェンスはコンパクトさと連動性に欠け、2トップの金森と坂田は前線で一生懸命攻守に動きまわるのだが、DFラインが低くて後ろとの距離が開いて良いタイミングでパスが出て来ず空回り気味。

4バックは最近にしては横への広がりが大きく、特に相手のサイド攻撃にSBが外へ開いて対応すると、そのスペースをボランチやSHが埋めずにCBが単純にスライドして対応するため最終ラインに穴が開きやすい。前半36分のウイルソンの先制点も、ベガルタの大岩が右サイドの高い位置で基点を作り、SBが動いたスペースへ奥埜に入り込まれ、そこでパスを繋がれて決められたもので、中盤が全く奥埜の動きに対応できていなかった。

しかし、そこから仙台のダイナミックな攻撃は急激にしぼんでしまう。選手間の縦の動きが見られなくなり、福岡は前線に長いボールを送ってセカンドボールを支配する戦い方に切り替えると、仙台の守備はズルズルと下がってしまって何度も福岡にセットプレイのチャンスを与えてしまう苦しい展開。そして後半12分に、城後のロングスローをsん台のハモン・ロペスが目測を誤って後逸、後ろにいた坂田が体を投げ出して同点ゴールを決めてしまう。その後は互いに選手を投入して展開の打開を図るも試合は動かず1-1のドローで終了した。

仙台は、序盤にあれほど圧倒していながら後半はわずかシュート1本。暑熱対策で長袖で練習していたそうだが、やはり日本の夏はそんなヤワな敵では無かったようだ。ここでもいろいろJリーグの戦術についてはもっともらしく苦言を呈しているけど、先の大宮の試合もそうだがある程度ルーズな戦術で試合を持たせられる柔軟性、割り切りが無いと、理想論だけでは監督として高い成果は揚げられないのだろう。だからと言って、秋春制は豪雪地帯を考えるとナンセンスだし、日本のサッカーは本当に難しい・・・

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