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「ようこそアジアへ、ハリルホジッチ」ロシアW杯アジア二次予選 グループE 日本-シンガポール

ハリルホジッチは前日の会見で、シンガポール戦には「罠が仕掛けられている」と語ったわけだが、まさかこんな形で嵌ってしまうとは想像もしてなかったに違いない。

試合の展望で、日本は自陣で固く守る相手にクロスを上げてもそう簡単に点には繋がらないから、ゲーゲンプレッシングで対抗するのが良いのではないかと書いたんだけど、まさか両方とも機能不全になってしまうとは自分にも意外であった。

日本はハリルホジッチが意図する速いサッカーを見せたのは前半と後半の最初わずか2分だけで、後は5-4-1のフォーメーションで自陣に固く壁を作るシンガポールの前に、いつもの遅攻を繰り返すのみ。

岡崎、宇佐美、香川、本田の4人が相手DF5人の幅にすっぽり入って平行に壁を作り、サイドも相手のSHがカバーしている上に太田も酒井もあまり高い位置を取らず、長谷部や柴崎からゆるい横パスが来て縦を切られてそこでおしまい、振り出しに戻るという感じで、相手の守備を縦にも横にも動かせないまま時間が過ぎて行ってしまった。

前線は前に張り付いたまま、守備陣は後ろで待機状態ではプレスの連動性が生まれるはずもなく、日本の守備は常に1対1での対応を強いられ、ゲーゲンプレッシングらしい複数でボールホルダーに襲いかかるような守備は皆無だった。そして後半には運動量で負けてセカンドボールを拾われる有り様。

もともとシンガポールやタイなど東南アジアのチームは運動量があって俊敏なため、狭い中で打開しようとしてもまず上手く行かないし、試合の後半になってもスペースを開けてくれない。こういうチームはヨーロッパやアフリカにも存在せず、ワールドカップでは百戦錬磨のハリルホジッチにとっても未体験ゾーンだっただろう。アジアにはアジアならではの難しさがあるのだ。

ボールを速く動かして相手のゾーンを広げ、ゴール前での人口密度を薄くした上でクロスやミドルシュートを狙うのが引いた相手に対する定石なのだが、日本は背の高いターゲットマンはいないし、DFラインからのロングフィードもミドルを打てる人材もいない。そして日本人特有の、状況が悪くなればとことん狭い場所でサッカーをやりたがる悪癖。

相手GKが当たりまくっていた事と、宇佐美や本田、香川のプレイ精度も好調からは程遠く、せっかく事前にマッチメイクしたイラクは玉砕戦法で全くシンガポール戦のシミュレーションにならず、コンディショニングや事前準備という点でもハリルホジッチには誤算だっただろう。

確かにホーム初戦でスコアレスドローというのは最悪に近い結果になってしまったが、まだ8試合中の1試合が終わっただけで世界が崩壊してしまったわけではない。この試合を糧として、同じようなサッカーで対抗してくるであろうこれからの予選に対し、ハリルホジッチがどういう対策を施してくるのかに期待したい。

とりあえず、「ようこそアジアへ、ハリルホジッチ」

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