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「プレミアリーグも席巻しつつある新時代の3バック。それに比べて日本は・・・」イングランド・プレミアリーグ第11節 チェルシー-エヴァートン

シーズン序盤の不審から一気に立ち直り、今節では6位のエヴァートンに5-0と圧勝して首位リヴァプールに勝ち点1差の2位にまで浮上してきたチェルシー。勝利を重ねた直接の要因は、この試合でも2得点を決めたアザールや、得点ランクトップのジエゴ・コスタといった攻撃陣の好調ぶりにあるのは事実だが、それを支えているのはリーグ戦の5試合で無失点の堅守である事は見逃せない。

それまではむしろザルだったチェルシーの守備を変貌させたのは、コンテ監督がユベントス時代にお手の物にしていた3バックの採用にある。対戦相手のエヴァートンも、チェルシーが3バックで来る事は完全に想定済みで、あえて自分たちも3バックにしてミラーゲームを狙って来ていた。

数年前までは、DFラインの数はゾーン・ディフェンスの基本である4人が当たり前で、欧州で3バックを採用していたのはマンマークが好きなイタリアぐらいに限られていたのだが、今ではペップ時代のバイエルンやドルトムント、最近では長谷部のフランクフルトなどドイツでは完全に一般化しつつあるのだが、まさか4-4-2の代名詞とも言えるイングランドで、3バック同士の試合を見られるようになったのは実に感慨深い。

そのチェルシー3バックは、ブラジルW杯でオランダなどが採用したマンマークベースとは異なり、かなりゾーン・ディフェンス寄りの守り方になっている。従来のサッキ式に基づいた4バックのゾーン・ディフェンスは、守備時には左右のコンパクトさが求められるため、どうしてもボールと遠いサイドのスペースが大きく空いてしまう。それをカバーするために、サッキ式ではSBやボランチがスライドするディアゴナーレという連動で対応するのだが、組織の熟練度が要求されるのでスターが多くてターンオーバーが前提のプレミアリーグや、組織にかける時間が限られた代表では採用が限られていた。

しかし3バックの場合は、守備時にはWBが戻ってDFラインが5人になる事でほぼ横幅をカバー出来るようになるので、4バックのような細かい連動性が必要なくなる。そして4バックだとCBにはスピードや守備範囲の広さが求められるのだが、3バックの場合はもうちょっと能力的に偏っていても補完が出来る。これがチェルシーの選手にとっては非常に助けとなったのだろう。

ただし3バックは選手の配置が後ろに偏る分、攻撃陣の選定が難しくなる。どうしても前線のターゲットが不足するのでFWにはジエゴ・コスタのような電柱系が必要になるし、攻撃陣はアザールやペドロのようなパスセンスよりも少ない人数で攻め切れる個人打開力を持った選手が求められる。WBはDFラインからFWの位置まで激しい上下動を厭わないスタミナお化けでないと耐えられない。

おかげで、セスクやオスカルといった線の細い選手、ウィリアンのようなコンビネーションで活きる選手がすっかり出番を失ってしまった。逆にレスターから移籍したカンテはあっという間に完全なチームの心臓となったし、アザールの守備負担を軽減できるマティッチが重宝されるようになってしまった。新加入の選手のみならず、DFラインの数が1つ変わっただけで、どんなスターもあっという間に干されるビッグクラブの厳しい現実である。

それにしても、欧州ではまずゾーン・ディフェンスが土台にあって、そこから相手との相性、フォーメーションの噛合い、保有選手の組み合わせで、攻撃性や守備性についてディテールを細かく模索していくかという段階になっているのに、日本では未だにポゼッションサッカーを放棄したオーストラリア戦のハリルジャパンはけしからん、みたいな二元論レベルに留まっているのには心底ゲンナリするよね。オマーン戦でもまた同じような話が繰り返されるんだろうか(苦笑)。

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