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オマーン戦で果たして現れるのか、ハリルホジッチ・ジャパンの第3形態

ここ2ヶ月ほどは公私共にいろいろ忙しく、夜にサッカーを見る時間を取るだけで精一杯で、Twitterは朝に生存確認用のつぶやきをするだけでほぼ放置状態なのですが、昨日は「我が意を得たり」と思えるコラムがあったので、TLにちょっと流してみました。

このコラムでは、プレッシングとショートカウンターの型が日本には無いと書かれていますが、もうちょっと具体的に書いてみると「日本には”攻撃的な”ゾーン・ディフェンスの文化が無い」という事になるかと思います。

4-4-2の3ラインゾーンを組んで守るやり方自体は今やJリーグでも特に珍しい戦術ではなく、代表でも第2期岡田ジャパンや先日のオーストラリア戦がまさにそうだったのですが、いずれもどちらかと言うと待ち構えて守る方式であって、アトレティコがやっているようなサッキのゾーンプレスに基づくハイライン・ハイプレスのサッカーではありません。今までの歴史を見ても、そういうサッカーをやっていたのはトルシエジャパンと尹晶煥監督時代の鳥栖、一時期の金沢や山口ぐらいでしょうか。

その理由としては、最近まで日本の選手育成にはゾーン・ディフェンスという概念が欠如していて、そもそもピッチ上のゾーンを把握する能力が選手に備わっていない事、スプリントの量が求められるゾーンプレスは日本の夏場の気候に適していない事などが挙げられますが、意外と厄介なのが「選手の自由な発想が介在する余地が少ない」という点だと思っています。

サッキの4-4-2は、スカルトゥーラとディアゴナーレという極めて精密な動きの連携が必要であり、それをたった1人の選手がサボっただけで守備に大きな穴が空いてしまいます。攻撃でも、ボールから遠いサイドの選手が高い位置に上がり、そこへサイドチェンジを通す事が重要なポイントになっていて、長いパスの精度とスピードに欠ける選手が多い日本では適合できる選手が少ないです。いきおい、選手や上層部の不興を買う結末になるのはトルシエジャパンと鳥栖を見れば分かる通りです。

だいたい、日本では代表に選ばれるような上手い選手には自由が与えられてしかるべきだ、という困った風潮がありますからね。マスコミも、「オーストラリア戦の戦術に選手は困惑していた」みたいに、横暴な監督の戦術に反旗を翻すのが選手の正義、みたいに煽ってますし。例えば偉大な演奏家に対して、あなたの真価はクラシックでは発揮されない、そんな事はやめて即興音楽をやるべきだ!なんて言ってるのと同じですよ(苦笑)。

また、昨シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でアトレティコが守備的なレアルを崩せず負けたように、ハイプレス・ショートカウンターサッカーは引いて守る相手に相性が悪いという問題があります。サウジのようなロングカウンターを得意とする相手に対して、ボールにプレッシャーがかからない状態でむやみにラインだけを高くしてしまうと、一発で裏を取られてしまう危険性が高くなります。アジアの審判のレベルを考えたら、オフサイド見逃しの判定も怖いですしね。

もう1つ、攻撃的なゾーン・ディフェンスの方式としては、ドイツなどでよく見られる3バック気味にしてSBを高く上げるポゼッション志向の強いスタイルもあります。対アジアという面ではこちらのほうが有効に思うのですが、代表では両SBに縦へボールを付けられる選手がおらずビルドアップの出口が限られてしまっている、トップ下に人が張り付いて前線から下がってボールを受けるスペースを消していて、パスコースが作れていないという問題があります。そもそも、ハリルホジッチがそういうサッカーをやろうとしていないフシもあります。

いずれにせよ、攻撃的になるとポジションバラバラの「自分たちのサッカー」、守備的になると引きこもりオージー戦の2種類しか無い現在の代表では、今後の厳しい最終予選を乗り切ることは極めて難しいです。本番のサウジ戦の前に行われるオマーン戦で、ハリルホジッチがその答えとなる新しい戦術の第3形態を出してくるのかどうか、注目してみたいと思っています。

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