サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「自分たちのサッカー発動で復活した長友」イタリア・セリエA第10節 インテル-トリノ

ここまでリーグ戦3連敗の14位と沈み、一気にフランク・デ・ブール監督の更迭が現実的になってしまったインテル。まさに崖っぷちのチームが選択したのは、まさに「自分たちのサッカー」の復活だった。

今までのインテルがやろうとしていたのは、選手は攻撃時にワイドなポジションを取り、SBも上がらずゾーンを守った状態でパスを使った大きな展開をするオランダサッカー。しかし前線のイカルディはそれに適したポストプレイヤーではないし、エデルもカンドレーヴァもウインガーでなく、オランダ式のサイドアタック&クロスという攻撃はほとんど出来ていなかった。

ところが、この試合でインテルが見せたのは今までと180度方向性が変わったサッカーであった。SBの長友とアンサルディが最初から高い位置を取り、左の長友が上がるとエデルとバネガが近い距離で絡んでサイドを崩し、相手にボールを奪われたら素早く前線からプレスをかけるという、ポゼッションとゲーゲンプレスに寄ったスタイル。これで、今までは燻っていた長友が一気に復活した。

長友は身長が無い上にゾーン・ディフェンスが理解できていないので、自分のゾーンを守って適切にアタック&カバーをするという守備をさせてもほとんど役に立たない。長友の正しい使い方は、最初から高く上がらせて対面のSHを低い位置に押し下げ、相手が長友の裏のスペースを狙ってもスピードと運動量で追いついてしまう。そのうち相手が疲れてうんざりし、攻撃が出来なくなるという「攻める守り」をさせて初めて輝く選手である。今回は、まさにこの形でヤゴ・ファルケを完全に押さえ込んだ。

こうなると、同じ4-3-3のフォーメーションを取るトリノは、個人能力のマッチアップで負けてジリ貧にならざるを得ず、イカルディの得点によって1-0とリードされて折り返した後半からはマキシ・ロペスを投入、4-1-3-2の形に変えて巻き返しを図って来た。

そこからはフィジカルに長けた2トップを基点にしてトリノが前に圧力をかけて来るが、インテルは鋭いカウンターで対抗、後半の40分間で枠内シュートを6本も放つのだが決定的なチャンスに決められず、引き分けムードが流れ始めた後半43分、右サイドからのカンドレーヴァのクロスが流れ、サイドラインを割るかと思われたが長友が追いつき、パラシオのセンタリングを受けたイカルディが反転からのゴールを決め、これが劇的な決勝点になった。

あくまで邪推だが、この突然のサッカースタイルの変更は、ザックジャパンのように選手側から自主的に方向性の転換について提案があったのではないかと思っている。監督としても、どうせ後がないし、そこまで言うなら一度好きなようにやらせてみようかという考えになったのではないか。しかしこれで勝利という結果が出たことで、この路線を続けようとするのか、批判が収まったらやはり元の方針に舵を切り直そうとするのか。長友の起用法を含めてインテルの出方に注目したい。

 

モバイルバージョンを終了