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「耐えることが出来る、という価値の重みを知る森山監督」AFC U-16選手権 グループB 日本-キルギス

日本と並ぶグループ突破の本命と目されていたオーストラリアを初戦で1-0と破り、一躍ダークホースとして名乗りを挙げたキルギス。日本との試合になった2戦目も、序盤はその実力がフロックでない事を示した。

キルギスのフォーメーションは4-4-2で、まさに絵に描いたようなハイプレスのゾーン・ディフェンス。こういうモダンな戦術を、U-16世代の自国監督が駆使しているのがアジアの現状であり、日本とアジアとの実力差が縮まっていると言われているが、それは選手の話じゃなくて、本当は指導者のレベルこそが日本はアジアから遅れを取りつつあるという危機感を持つべきだと思う。

当然、フィジカルに勝る相手が日本の2トップとSHに常時激しくプレスをかけて来るので日本は前線で基点を作れず、前半は相手のライン裏にアバウトなロングボールを蹴るだけになってしまった。スタートのポジションが、日本はサイズが無い棚橋と久保の2トップで、ボランチが喜田と福岡という猟犬タイプの選手を並べてしまったのも原因だったが、そこは相手の運動量が落ちて来るまでは耐えようという森山監督の意図があったのかもしれない。

日本は前半19分に左サイドの決定的な抜け出しからシュートを打たれるなど危ないシーンは作られたが、久保を右サイドに回して中村と棚橋の2トップにポジションを変えると少し試合が落ち着き出し、前半30分に左SBで先発した小林友希が怪我でゲームメイカーの平川と交代した事で一気に流れが変わった。

その時間から、キルギスのプレッシャーが弱まった割にラインを上げたままだったので、逆に日本の前線が相手のミスを誘うプレスをかけられるようになり、34分に瀬古のフィードはいったん相手に奪われたものの、棚橋のプレスに対して苦し紛れにクリアしたボールを棚橋自身が上手くカット、そのまま持ち込んでGKのニアを抜いたシュートで日本が先制すると、その後も立て続けに相手のミスを突いて久保のフェイントからの右足シュート、中村が折り返しを足で引きつけ左足で決めたゴールで3-0とする。

これでほぼ試合は決まってしまったようなものだが、後半は気持ちが切れたキルギスに対して日本が無慈悲に攻め立て、アジア最終予選ではちっとも取ってくれないのに(笑)、微妙な判定のPKを2本ももらって、棚橋のハットトリックと久保の2ゴールを含む8-0と大勝、日本は2試合で15点と圧倒的な攻撃力を見せつけ、裏の試合で何とオーストラリアがベトナムに敗れてグループリーグ敗退、自動的に日本はグループ2位以内を確定して決勝トーナメント進出を決めた。

大会前はここまで楽な展開になるとは思わなかったが、強豪のオーストラリアがグループリーグ敗退、グループCの韓国も自力突破消滅と、1つ歯車が狂うとなかなか立て直せないのがユース世代の難しさであり、日本ももし相手に先制されて焦りが出る展開になったら、こう簡単には勝てなかった可能性は十分にある。まあ、それは情けない事に日本においてはユースに限った話では無いのは実証済みなのだが・・・(苦笑)

それだけに、こういう一発勝負の大会では、上手く行かない時間帯に耐える事が出来るかが重要であり、前半30分までのキルギスの猛攻を我慢できた事は、森山監督にとってはしてやったりというところだろう。次節のオーストラリア戦では完全にターンオーバーが出来るわけで、その次に控えるU-17W杯の切符がかかった準々決勝へ視界良好というところだが、得てしてそういう有利な時に限ってあっさり負けるのが日本だったりするので、メンタルとフィジカルは緩めずしっかり引き締めて臨んでもらいたいところだ。

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