サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「真の敗因は個人の問題じゃなく、選手の経験不足を戦術で補えなかった事」リオ五輪サッカー男子 グループB 日本-ナイジェリア

ナイジェリアが資金難のためアメリカで足止めされ、当日にやっとこさマナウスに到着したというニュースで、そんな準備不足のチームには勝てる、みたいな雰囲気が巷に流れていたようだが、個人的にはそのムードが逆に危ないなと思っていた

そもそも、日本が手も足も出なかったブラジルが初戦の南アフリカ戦でドローに終わり、ナイジェリアはその南アフリカよりもさらに強いわけで、どう考えてもブラジル戦と同じような待って受けるだけの守備では厳しいのは当然だった。

選手もその事は頭に入っていたのかもしれないが、試合開始早々の失点で守備陣が浮足立ってしまい、GK櫛引の表情は明らかにこわばり、室屋はブラジル戦の対ネイマールと2失点目のかぶりで自信を喪失、OAの藤春は相手との間合いが近すぎるか遠すぎるかで狙われてしまい、DFリーダーであるはずの塩谷はラインを合わせられず失点の原因になるなど、誰も地に足がつかないうちに失点を重ねてしまった。

手倉森監督の選手選考も、最大の成功体験であるアジア最終予選のメンバーを信じてみたのだろうが、落ち着いてプレイしていたのは海外組の南野と、ACLでの経験が豊富な興梠と大島ぐらいで、藤春と塩谷はOAではあるがこのレベルでの経験の浅さを露呈、中村じゃなくて櫛引の起用も裏目に出てしまった。経験不足は、アジアの物差しで行けると判断した手倉森監督にも言える事である。

さらに、手倉森監督は戦術面でも誤りを犯した。もともと、手倉森監督はゾーンの形を作ることが出来てもゾーンを能動的、流動的に動かすことが出来ない監督だと思っていて、戦術的な応用力の無さを自覚しているから今まで4-4-2のままでフォーメーションをいじらずに来たのだろうと思っていたし、試合前に4-3-3をやると語っていたのも煙幕かなと思っていたら、本番ではそのまさかの4-3-3を使って来たのには驚いた。

おそらく、監督はブラジル戦の内容を受けて、サイドを攻められないようにワイドにカバーして、中央にアンカーを置いてバイタルをカバーさせようと考えたのだろうが、それが通用するのはアジアまでである。先日見たインターハイの試合と同じスポーツとは思えないほど、ナイジェリア戦での日本の4バックは横に広がっており、SBがディレイをしても本来カバーするはずの大島、原川との距離が遠すぎ、結局SHの南野と中島が長い距離を走って戻らざるを得なくなっていた。

ユーロを見ていても、今の戦術トレンドは4バックはPAの幅より外には広がらず、横にシュリンクして相手の中央突破を防ぎ、広く空いたボールと逆サイドのスペースはSHがケアするか、SBが外に出て間をボランチが埋めるという形がポピュラーになっているが、手倉森監督の戦術はまんべんなく選手を配置するだけなので、結果的に数的優位を作れず個人の能力に頼る守備になってしまい、その個人も経験不足でボロボロという悪循環になっていた。

攻撃に移っても選手間の距離が遠いままで、攻撃の組み立てはサイドに流れた興梠やファーサイドへのサイドチェンジに偏っていた。まあ、ワイドな守備からさらに攻撃ではワイドに広がっていたのだからある意味当然で、負けても4点取ったことを前向きに見る人もいるようだが、ナイジェリアが日本のガバガバワイドサッカーに付き合ってくれたおかげでもあり、コンパクトに守れるチームならサイドを攻めても中で跳ね返されて終わりになる可能性は高いと思う。

日本は4点目を取られてから、浅野を投入してようやく本来の4-4-2へとフォーメーションを変更したが、これで明らかに守備時の横幅がコンパクトになった。ただパスミスも増えて5点目を取られてしまったが、それも縦パスを出しやすくなるほど選手間の距離が近くなった証拠でもある。その後日本が2点を取り返したのは、単にナイジェリアが疲れただけではない。

”最初から”我慢して耐えるとか、相手を研究して対策するとか、そういう器用な芸当なんか出来ないチームなんだから、自分たちのサッカーじゃないけれど、これまでやって来た立ち位置にまずは戻る事だろう。コロンビア戦では、腰が引けたよそ行きサッカーじゃなく、泥臭くがむしゃらに戦うサッカーを見せて欲しい。

モバイルバージョンを終了