サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「ゾーンディフェンス・キラーであるはずの浦和を返り討ちにした大宮」J1 2ndステージ第4節 浦和レッズ-大宮アルディージャ

ツール・ド・フランスを見ていた最中にボチボチと録画していたJリーグの試合の中から、昨日選んだのは第4節・浦和と大宮のさいたまダービー。ダービーの盛り上がりはもちろんだけど、戦術的にどういうマッチアップになるかという興味があったのが理由。

ベルデニックやピムといった監督を起用してきた歴史があるせいか、大宮はJリーグのチームににしては珍しくモダンなゾーン・ディフェンスを見せるチーム。対する浦和のミシャサッカーは、Jリーグではあまり効果を発揮しないけど、本来であればゾーンディフェンスを打ち破るために考えだされたフォーメーションだった。

浦和は、攻撃時には両WBが高く上がって3トップと並んで5トップのような形になるが、これはPAの幅でコンパクトに守る事が多い現在のゾーン・ディフェンスの外側から攻める狙いがある。この試合の序盤は、CBの遠藤から宇賀神や関根に何度も良いパスが渡って浦和が大宮を押し込んだ。

それに対して大宮は、これも最近のセオリーであるボールサイドのSHが下がって5バックのような形で守ろうとしたのだが、このパターンになるとやはり中盤と前線の枚数が足りないためにカウンターに強い選手がいないとジリ貧になりやすく、攻撃の大黒柱である家長を欠く大宮がどういう対策に出るのかなと注目したが、渋谷監督の取った策は「前に出る事」だった。

大宮は、両SHのマテウスと泉澤が前から積極的にプレスをかけて浦和のサイドでのビルドアップを封じると同時に、ボールを奪ったら前目に残っているそのマテウスと泉澤にボールを集め、浦和の宇賀神と関根を後ろに下げさせる事で主導権を奪い返した。当然、SBの上がったスペースを浦和に使われる危険性は出るが、そこは高さの無い浦和のFWを見越して中で跳ね返せば良いという割りきりである。

日本のチームの場合、えてして「リスクを減らしたフラット3」のように全部美味しいとこどりをしようとして破綻したり、自分たちのサッカーとかアクションサッカーを唱えてリスクを放棄したり、はたまた守備の穴を埋めようとするあまりに引きこもり硬直サッカーになってしまったりと極端に走る場合が多いが、大宮のプランはしっかりバランスが取れていて感心させられた。こういうチームが増えてくると、Jリーグも希望が持てるよね。

前半の37分に柏木の見事なFKで先制点こそ奪われたが、前半のロスタイムにCKから江坂が頭で合わせて同点にすると、後半には再び武藤のゴールでリードを奪われたが、23分にはマテウスがドリブルからカットインしてのミドルシュートを突き刺し、その後も互いにチャンスを作りながらも2-2で終了と、さいたまダービーを名乗るにふさわしい、戦術的にもエンターテイメント的にも見どころの多い好試合だった。

モバイルバージョンを終了