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「まさかフルームのひとコケで、こんなに面白いレースになるとは」ツール・ド・フランス2016 第19ステージ

今大会の最後のクライマックスと呼べる、ビサンヌ超級山岳を超えてスキーリゾートの1級山岳、サン・ジェルヴェ・モンブラン頂上ゴールとなっている第19ステージ。

しかし既に総合トップはフルームで完全に揺るぎなく、チームスカイ以外の各チームの焦点は表彰台争いになっており、何人かの逃げ集団を中盤のフォルクラ峠で追いかけるのはアスタナの役割になっていました。つまり、チームスカイに先頭を引かせて疲れるのを待つのではなく、総合で7位につけているファビオ・アルの順位を引き上げつつステージ優勝を狙うために、フルーム以外を振り落としにかかっていました。

もちろんチームスカイはアスタナの後ろにしっかり陣取り、フォルクラ峠でリオ五輪のタイムトライアルに出場予定だったトム・ドゥムランが落車で手首を骨折したかもしれないアクシデントがあった以外は、そのまま淡々と逃げ集団から2分強の差でつかず離れずという展開に。

ところが、超級ビサンヌ峠の頂上付近から雨が降り出し、下りで先頭で逃げていたロランや総合上位のリッチー・ポートやモレンマを含む何人かの選手が滑って落車するという荒れたシーンが続いた後、なんとマイヨジョーヌのフルームまでもが前輪を滑らせて落車、壊れた自転車を捨ててチームメイトのゲラント・トーマスの自転車を借りて走り出すという大変な事件が起こりました。

気がつけば、メイン集団の先頭はたったの3人となり、その中にいた総合5位のバルデが棚ボタ状態でペースアップ、逃げ集団の中で唯一生き残っていたルイコスタと一緒に最後のモンブランへと登り始めました。

後方のメイン集団でも一気にフルームを落とすチャンスではあったのですが、そこはチームスカイのアシストが献身的な引きでフルームを何とか集団につかせ、リッチー・ポートやキンタナのアタックに対してもポエルスがすぐさま反応して潰し、結局リッチー・ポートは最後の場面でフルームから遅れを取る始末。

しかしフルームも体に合わないバイクではメイン集団に食らいつくのが限界のようで、先頭で逃げるバルデまで30秒まで差を縮めてから先はペースが上がらず、逆に追いついてきたバルベルデがそのままキンタナを引っ張ったままペースアップ、最終的にキンタナはフルームに10秒の差を付けてゴールし、何とか一矢を報いた格好になりました。

そしてステージ優勝は、何とかメイン集団の追撃を振り切ったバルデが、嬉しい今大会初めてのフランス人選手としての勝利を飾ると同時に、遅れた2位のアダム・イェーツ、3位のモレマを大逆転して総合2位の表彰台圏内にジャンプアップし、あんまり何もしてないけどキンタナが密かに3位へ浮上しました。

いや~、しかしフルームには悪いですが、1つ下りでコケただけでこんなにレースが面白いものになるとは思いませんでしたよ。これが大怪我でリタイアだったらがっかりですが、これぐらいのスパイスがあってもバチは当たらないでしょう(笑)。さて明日は最後の山岳ステージ。頂上ではなく下りきってのゴールですが、逆に言えば今回のようなアクシデントがあると挽回出来ないステージでもあるので、全員が緊張を強いられるレースになりそうです。

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