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「ツール・ド・フランスのエンターテイメント性を破壊しまくるチームスカイ」ツール・ド・フランス2016 第16ステージ

正直、毎年の恒例行事になっているので見てますけど、今年のツール・ド・フランスは例年以上につまらないなと思っています。

ツールの華である山岳頂上ゴールステージといえば、最後の登りでアタックが繰り返されてアシストが振り落とされ、最後はエース同士の一騎打ちになって勝ち残った選手が歓喜のゴールポーズを決める、というのが様式美なのですが、今年はそういうシーンがほとんどありません。その一番の原因は、チームスカイがあまりにも強すぎる上に、総合優勝に的を絞りきった戦略を取っているからだと思っています。

まず、マイヨジョーヌのフルームがステージを勝利したのは”下りゴール”の第8ステージのみで、山頂ゴールだったアンドラ・アルカリス、モン・ヴァントゥのステージではことごとく逃げ集団に勝利を許しています。普通は、山頂ゴールのステージはステイタスが高いですし、山岳賞ポイントも大きく稼げるのでどのチームも勝利を狙って逃げを許さないのですが、マイヨジョーヌを擁するチームスカイ自体が動かず、他のチームが貧乏くじを引くのを嫌って集団のペースを上げに行かないので、結局そのまま逃げが決まるというパターンが続いています。

その典型例とも言えるのが昨日のステージで、スタートから70km地点で逃げた集団が終盤の1級山岳フォルクラ峠を登り始めると、メイン集団を引いていたチームスカイが集団の蓋をするようにペースダウン、ペースを上げれば追いつきそうだった勢いを自ら完全に削いでしまいました。ステージ優勝狙いで集団を活性化させると総合争いという面で波乱要素が増えるのは確かですが、こういう事をされると本当にレースがつまらなくなります。チームスカイは他のチームに比べて資金量が豊富なために、山岳ステージで小銭を稼ぐよりも総合優勝だけをきっちり狙うという方針があるのでしょうが、それにしてもあからさま過ぎます。

かつてランス・アームストロングが(ドーピングとは言え)ツール・ド・フランスを席巻していた時は、山岳ステージをことごとく取りに行って圧勝していた記憶は新しいですが、フルームには彼ほどの自己顕示欲は期待できそうにありません。その淡々と総合優勝だけを目指す姿勢は、かつてのインデュラインを見ているようです。

案の定、最後の超級山岳フィノー・エモッソンの登りになって、ニーバリとアルーのアスタナ勢が躍起になってメイン集団のペースを上げてもチームスカイの牙城はびくともせず、ダニエル・マーティンやバルベルデのアタックも3人のアシストが次々に潰し、キンタナも全く動く気配が無いままゴールまで残り2km。

ここでようやく最終アタックを仕掛けたのがリッチー・ポート。これでチームスカイのアシストがようやくいなくなり、一時的にフルームからリードを奪ったもののフルームは慌てずイーブンペースでリッチー・ポートを射程内に。逆にキンタナはフルームのペースアップに付いて行けず、またもキンタナは周囲の期待を裏切る走りになってしまいました。

結局、ステージ優勝は最後に逃げ集団を突き放したザッカリンが制し、フルームはリッチー・ポートと共に先頭から8分差のステージ11位。上位争いの中では、アダム・イェーツがフルームから8秒、ロメン・バルデは11秒、ファビオ・アルは19秒、キンタナは28秒、そしてモレマは40秒と、さらにマイヨジョーヌ争いは堅固な石垣が1つ積み上げられてしまいました。とは言え、登り姿を見るとフルームの調子自体は万全では無かったように思うので、それ以上にライバルがダメだったのは本当に残念です。

さて今日のステージは標高差500mを17kmで登り切る山岳タイムトライアル。総合争いが白熱していれば面白いステージになったでしょうが、今年は勝負という面ではほぼついてしまった状態なので波乱は起きそうにありません。フルームの強さをまたも噛み締めさせられる結果になってしまうのでしょうか。

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