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「バイク事故で自転車が無くなり、走ってゴールに向かったフルーム」ツール・ド・フランス2016 第12ステージ

中盤戦最大の山場である第12ステージ、モン・ヴァントゥ頂上ゴールステージは、何と山頂付近で時速120kmという凄まじい暴風が吹き荒れており、”死の山”と呼ばれている通りに上の方は風を遮る植物が無いので、コースが短縮されて残り6km地点にゴールを設けるという措置が取られるという波乱を予感させるスタートとなりました。

しかしレースのほうは集団が序盤から逃げが決まったものの、特に総合争いで注意しないといけないような選手がいなかったのでチームスカイも全く追撃の気配を見せず、途中で18分以上の大差がついてしまって事実上ステージ優勝は逃げグループのものへと限定されてしまいました。

そして距離は9.5kmに短縮されてしまったモン・ヴァントゥへの登りが始まると、グライペルらスプリンター系の選手は当然振り落とされ、逃げメンバーから残った選手はデヘント、パウエルス、ナバーロの3人。後述のアクシデントのおかげで全くゴール前はテレビに映らなかったが、最終的にはデヘントが登りのスプリントを制してステージ優勝。同時に超級山岳のポイントも稼いで、山岳賞のジャージを手にしました。

一方、後方で繰り広げられるはずだった総合争いは、登りの序盤こそモビスターチームが先頭を引いてペースを上げたものの、すぐさまチームスカイが対応して主導権を握り、そこからモビスターのバルベルデ、キンタナがアタックを仕掛けたがこれもチームスカイが難なく吸収。そして残り2km地点でフルームがアタックを仕掛けると、リッチー・ポートは何とか付いて行けたもののキンタナはズルズルと遅れ始め、これは今年のツールもフルームで盤石なのかと思った矢先に、まさかのアクシデントが発生。

ゴールまで1km地点で、フルームらの前を走っていたカメラバイクが突然ストップ、そのカメラには為す術無くバイクに激突するリッチー・ポートの姿が映っており、同じ集団にいたバウク・モレマは再び走り出せたものの、リッチー・ポートは大きく遅れ、フルームに至っては自転車がバイクの下敷きになって壊れ、チームカーも来ないので仕方なく自転車を捨てて自分の足で走る始末。

当然、後続の選手にも抜かれてフルームはメイン集団から1分40秒の遅れとなってしまい、これは総合争いで致命傷になるかと思われたのだが、運営側の審議の結果、フルームとリッチー・ポートはモレマと同タイムの扱いになる救済処置が取られ、結局キンタナに対してはさらに19秒の差を稼ぎ、総合では54秒のリードを保つ事になりました。

本来であればゴール前3km地点ぐらいからはコースの両側に安全柵が設置されているはずなのですが、事故が起こったゴール前1km地点に柵が無くて観客が道を埋め尽くしており、バイクの故障が原因と言われていますが多すぎる観客に阻まれてのエンジンストールであった可能性が高いような気がします。おそらくゴールを移動した時に柵の作業が間に合わなかったのでしょうが、危うくレースが台無しになってしまうところでした。総合争いのデッドヒートは歓迎ですが、やはり正当な争いでなければ意味が無いですからね。

そういう意味では、フルーム最大のライバルと見られていたキンタナに元気が無いのはちと残念。今日のステージは個人タイムトライアルですが、37.5kmと距離は短めなものの、タイムトライアルを得意とするフルームがライバルたちに着実な差を積み重ねるステージになるでしょう。キンタナには後半戦に向けて何とか調子を上げてもらい、後半戦のアルプスを盛り上げて欲しいところです。

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