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「”収穫は負けたこと”と語る本田の意図を掘り下げる」キリンカップ2016 決勝 日本-ボスニア・ヘルツェゴビナ

デンマークを破ったボスニア・ヘルツェゴビナとの対戦となった、キリンカップ決勝戦。

日本は前半28分に、宇佐美のドリブル突破からの折り返しを清武が合わせて先制するも、直後に一発のロングボールからホジッチがヘディングで合わせ、シュートはGK西川が弾くもののこぼれ球をジュリッチに押し込まれて失点すると、その後もボスニア・ヘルツェゴビナの高さに苦戦、後半21分にFKからカットインで長友が交わされてジュリッチに縦パスが入り、吉田がマークに付いたものの股間を抜かれて逆転、日本は攻撃の選手を次々に投入するが、ロスタイムに浅野がGKと1対1の大チャンスにパスを選択してしまって得点ならず。ボスニア・ヘルツェゴビナに逃げ切られて日本は優勝を飾ることが出来なかった。

ボスニア・ヘルツェゴビナはデンマーク戦をこなしてフィジカルコンディションも整い、オシム御大のハッパも効いたのか日本をちゃんとリスペクトして研究し、全力で挑んで来てくれた。日本ホームでの親善試合というシチュエーションだが、アウェイでのテストマッチのような相手の本気度だったのは確かで、試合に負けた事は悔しいが最終予選に向けて日本の課題や成果を確認するという意味では、本田の言葉を借りると負けたことが収穫と呼べる、大変良いテストマッチになったのではないかと思う。という訳で、以下にそのポイントを挙げてみる事にする。

ボスニア・ヘルツェゴビナの日本対策

ブルガリアは日本に対して何の予備知識も無く戦ったのだろうが、ボスニア・ヘルツェゴビナはそのブルガリア戦をしっかり研究して臨んだ事は間違いない。その対策は、まずブルガリア戦ではフリーで自在にゲームメイクしていた柏木にプレスをかけ、DFラインを高く挙げて日本が誇る2列目にスペースを与えないようにした。そしてブルガリアの対応がゆるゆるだったSBのオーバーラップ対策は、SHを下げて5バック気味にして守ることで、長友と酒井が上がるスペースを潰した。そして攻撃では長友、柏木、宇佐美のフィジカルが弱い左サイドを中心にロングパス主体で攻め、ジュリッチは森重のサイドに寄って高さのミスマッチを最大限に活かした。

前半の日本は、マークを物ともしない宇佐美のドリブルで相手の対策を無効化したが、後半から守備の強化で柏木から遠藤に変わると左サイドにボールが送られなくなり、吉田や森重が代わりに縦パスを入れるも精度を欠いてミスが増え、ボスニア・ヘルツェゴビナの高いラインを岡崎が裏抜けしようとするも、相手の高さとリーチにタイミングが合わず、結局足元へのパスを繰り返すだけになり、ハリルホジッチが言うようなファールをもらえるスピードに乗った攻撃が出来なかった。

香川と小林の不在による攻撃の奥行き不足

ブルガリア戦からは香川と小林が外れた前線のメンバーになったが、それによって小林と岡崎が裏を狙い、清武と香川がバイタルでボールを受けるマルチタスクから、岡崎と清武だけのシングルタスクになってしまい、前線の縦への流動性が失われてしまった。前半はそれでも宇佐美の個人突破でカバーできていたが、後半はサイドに張って裏を狙う形を狙いすぎ、中は縦パスだけになって攻撃の奥行きが作れず、渋滞を引き起こす事になってしまった。

海外組のコンディション

これはボスニア・ヘルツェゴビナも同条件なので言い訳には出来ないが、怪我で不出場になった本田を始め、海外組の肉体的、精神的なコンディションが上がっていなかった。2試合先発の清武は最後のシュートをふかしたようにヘロヘロで、岡崎もいつものしつこさが無く淡白で、長友も守備の試合勘が鈍ってインテルでの悪い時のような感じだった。そして何よりチームで出場機会を失っている吉田は明らかに疲れており、ただでさえ不足しているスピードがさらに落ち、ビルドアップもミスが多く最悪の出来で、最終予選に向けて非常に不安が残る状態だった。ただし酒井高徳と長谷部については、今期の好調ぶりを証明するかのように海外組の中では奮闘していたように思う。

日本の攻撃と守備のバランス

ザックジャパン、いやそれ以前からずっと日本にとっては課題になっているのが、選手の人選によって攻撃も守備もどっちかに偏ってしまうところ。ボランチに柏木が入ると攻撃のリズムは良くなるが、中盤の守備力がはっきり落ちる。遠藤が入ると守備は良くなるが左サイドの攻撃が死んでしまう。長友は攻撃は良いがただでさえ高さ不足の日本にとっては守備の弱点になるし、宇佐美と浅野は2列目としては世界レベルの守備力に達していない。そして戦術では攻撃的に前がかりになると、後ろはとても少人数では守れないし、少ない人数で攻めるには高さもスピードも前線に不足している。相手にとっては実に対策しやすいチームである。

結論と対策

とは言え、本田と香川の欠場によって若手も貴重な経験を得る事が出来、通用する部分としない部分が見極められた事は前向きに捉えるべきだろう。Jリーグのサポーターには申し訳ないが、やはり短期的には宇佐美と浅野に海外へ移籍してもらって、高いインテンシティとフィジカルのサッカーに習熟してもらう、柏木や森重は今から移籍は難しいので、名古屋のシモビッチに千本クロスの練習をお願いする(笑)のは冗談として、後半に崩れてしまったゾーンのバランスが保てるように戦術練習を積み重ねる事が必要だろう。