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「ロナウド・ハットトリックを陰で支えた、ジダン監督の絶妙な戦術」欧州CL準々決勝第2レグ レアル・マドリー-ヴォルフスブルク

ヴォルフスブルクホームの第1レグでレアルは0-2で負けてしまい、絶体絶命の状況で迎えたサンチャゴ・ベルナベウでの第2レグは、エースのクリスティアーノ・ロナウドのハットトリックというあまりに劇的な形で3-0と勝利、2点差をひっくり返してのベスト4進出となった。

それにしてもクリロナのハットトリック、1点目は何でもないカルバハルのグラウンダークロスを、ヴォルフスブルクのDFが魅入られたかのようにスルーしてしまってファーサイドにいたクリロナが押し込み、2点目はCKをニアで競ったヘディングのボールが、ここしか無いというコースに飛んで決まり、3点目はジャンプした壁のわずかに空いた隙間にFKのボールが飛んでゴールと、神にプレゼントされたようにしか思えないぐらいに、それが決まるか!という得点ばかりだったのには呆れるしか無かった。

ヴォルフスブルクも決して悪い試合をしたわけでは無かった。フォーメーションは4-4-1-1とも4-1-4-1とも取れる形で中盤をコンパクトにし、ボールを奪ったらドラクスラーとエンリケの両ウイングに素早くボールを送り、基点を作ってから1トップのシュールレが幅広く動いてスペースを作りチャンスメイクをする。数は少なかったが、ヴォルフスブルクにも決定的なシーンはあった。もし1点でもアウェイゴールを取れていたら、結果はひっくり返っていた可能性は高い。

ただヴォルフスブルクにとっては、第1レグ勝利の立役者だったドラクスラーが前半の32分で怪我のため退場したのが極めて痛かった。それ以外の選手もよく頑張っていたけど、レアルに比べると選手個々のクォリティの違いは歴然で、良い形を作ってもそこからのボールコントロールやキックの精度が足りず、結局は得点に繋げられなかった。

とは言え、レアルが単なる個人の力だけで勝利したのではなく、その裏にはジダン監督の絶妙な采配があった。レアルのようなスター選手が集まったチームの場合、監督にカリスマ性が無いと選手を戦術でコントロール出来ず、控え選手も不満を溜めて空中分解するのがベニテスの例を挙げるまでもなくお決まりのパターンであり、ジダン監督についてはその面ばかりが強調されている嫌いはある。

しかしこの試合を見ると、確かにクリロナもある程度守備はしているんだけど、決して”守備をさせ過ぎて”いない。逆サイドのベイルも同様で、レアルはウイングにあまり守備負担をかけない戦術的な工夫がされている。そのポイントは、インサイドハーフのクロースとモドリッチ、SBのマルセロとカルバハルの使い方にある。

クロースとモドリッチが、クリロナとベイルが前線に上がった裏のスペースをスライドしてカバーするのは良くある形だが、レアルの場合はそういう場面で逆サイドに大きく空いたスペースに、ウイングじゃなくてSBが上がっている事が多い。ボールサイドで奪ってから、クロースやモドリッチが逆サイドにいるカルバハルやマルセロに正確なサイドチェンジを通し、そこからクリロナやベイルが絡んで相手の守備を崩して行く。これによって、クリロナとベイルの両ウイングは激しい上下動から解放され、温存した力を攻撃に専念させられるわけだ。

もちろんその戦術が万能と言うわけではない。決して人数をかけたコンパクトな守備じゃないのでボールを奪うのは個人能力に頼っているし、ヴォルフスブルクの選手の攻撃的なスキルの低さに助けられた面もある。それでもジダン監督が単なるカリスマだけじゃない、ちゃんとした指導者である事は確信出来た。あとは、ハメス・ロドリゲスやイスコといった不遇のスター選手をどう上手く使って行くかに注目してみたい。

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