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「ハリルホジッチは守備の事なんかこれっぽっちも考えてなかった」ロシアW杯アジア二次予選 シリア戦振り返り

最近はますます紙媒体の衰退と、ネットメディアの隆盛という流れがハッキリしつつあるのですが、一方でその弊害としてアクセス源として絶対的な影響力をもつYAHOO!トピックに取り上げられやすい、軽薄な煽り文句であったり、あえてアクセス目当ての炎上を誘うような悪文がのさばっているのは非常に残念です。

以前であれば、セルジオ越後とか杉山茂樹、金子達仁のような炎上芸人と、選手ベッタリのコバンザメライター、そしてその他の比較的まともなジャーナリストという明確な区別があったように思うのですが、最近はその境界が曖昧になりつつあって油断がなりません。

そして今回の中山淳氏による、YAHOO!トピックに上がったこの記事。中山氏については、YAHOO個人の欄を見てもすっかり危機感を煽る記事を売りにしている感があって何だかなあというところですが、今回ももれなく無駄に不安感を煽り立てています(笑)。

確かにシリア戦だけを見れば、ザックジャパンと変わらず守備はザルだったし、単純に勝負として見るだけなら原口のボランチ起用は不可解です。ただしチーム作りとはもっと長期的なスパンで捉えるものであり、そういう戦略的な視点が完全に抜け落ちているのが、中山氏についての問題です。まあ、ご本人はそれを分かった上で書いているのかもしれませんがね。

さてシリア戦。昨日はシャンとした頭で改めて試合を見なおしていましたが、「この試合でハリルホジッチは全く守備のことは考えていないな」と間違いなく確信しました(笑)。

ハリルホジッチは国内合宿でロープを使ってゾーン・ディフェンスの初歩的な練習をさせていたので、てっきりシリア戦ではゾーン・ディフェンスを取って来るのかと思ってましたが、全然違いましたね。ゾーンのように2ラインを作って網をかける場面などほとんど無く、とにかくどんどん前からプレスをかけてボールを奪う戦術、つまりゲーゲンプレッシングだったのです。

ゲーゲンプレッシングで重要なのはボランチの働き。この試合でハリルホジッチは、あまりゾーン・ディフェンスを理解出来ていない山口蛍を先発起用しましたが、それは彼にゾーンを守らせるのではなくて、どんどん動いて前からボールを追わせるプレス要員としてのタスクを与え、それを最終的に刈り取るアンカーの長谷部という風に役割分担をさせていました。だから、山口の代わりが原口で何の齟齬も無かったのです。

ただ問題は、原口があまりにもゴール前に顔を出し過ぎてしまったのと、長友と酒井高徳の両SBまで上がってしまっていた事、運動量が落ちて前線からのプレスがかからない時間帯だったのに、前半と同じように後ろが手薄になっていたのが原因であって、原口の投入だけがシリアに攻められた理由ではありません。

おそらく、ハリルホジッチにとってシリア戦のテーマは、シンガポール戦でのトラウマを払拭すること、つまり徹底的に攻撃的なサッカーで点を奪い切る事にありました。だからこそ、守備面での手当をせずに原口投入という攻撃的なッセージを送り、最後までゲーゲンプレッシングで乗り切ろうとしたのでしょう。だからこそ、試合後のインタビューではまず賞賛の言葉が出たのだと思います。もちろん、勝ち点1が重要なギリギリの勝負でそれをやったら無謀ですが、一応日本は最終予選進出を決めていましたからね。そこはハリルホジッチも冷静に計算はしていたはずです。

とは言え、ハリルホジッチがゾーン・ディフェンスを捨てたわけではないでしょう。現代のサッカーでは、試合中の展開によって複数の戦術を使い分けるのは常識であり、やはりどこかでゾーン・ディフェンスを使う試合は出て来るはずです。ただ、あえて今回はそれをやらなかったという事。それが、今回のシリア戦における自分の見立てです。

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