旧閑ガゼッタ

「宇佐美にはアブノーマル、原口にはノーマルの役割をハリルホジッチは求めている」ロシアW杯アジア二次予選 グループE 日本-シリア

昨日はプライベートな飲み会が夜にあったため、酔いが入ってところどころ記憶が抜け落ちた状態で試合を見ていたので、また戦術の細かい点については改めて試合を見てみるとして、まずは雑感のみで。

日本が前半で大量のチャンスを作ったものの得点は相手のオウンゴールのみで、そこから日本が追加点を取るまではシリアの方にも2度ほど数的優位からの絶好機を作られてしまったという事で、結果的には5-0という大勝だったけど後味があまり良くない試合になってしまったが、反省する部分は多々あるとしてもポジティブな面は確認できた内容だったと思う。

試合前の展望では、日本はどれだけハイペースにサイドを使ったでインテンシティの高い試合が出来るかと見どころを書いたのだが、前半はしっかりそれが実現出来ていたのではないか。

今までの日本の欠点として、せっかくカウンターや大きな展開があったとしても、ゴール前で急にスピードダウンしてチョコチョコ手数をかけては相手の守備に引っかかるという攻撃を繰り返していたのだが、特に前半8分に見せた酒井のキープからPA内に走りこんだ長谷部が絡んで岡崎が押し込もうとした場面、26分の岡崎と本田のパス交換に酒井が入り込む一連の流れは、ボランチとSBがPAの中に入って決定機を作り出すという、日本の新しい一面が表れていた。

シリアはその日本の攻撃に対して完全に混乱していて、ゴール前に選手を並べてGKとかろうじて水際作戦をするのが精一杯な状態だったので、その時間帯に連続して点を取れれば良かったのだが、そのラストプレイの精度向上はまだ日本に残された宿題になってしまったと言える。

しかしそういう日本のスピーディなパス攻撃の中で、唯一異質な光を帯びていたのが宇佐美の存在。前線の選手の中で彼だけが足元でボールをキープし、溜めを作ってからシュートやクロスを放っていた。普通に考えれば、宇佐美が日本のリズムを壊していたアブノーマルの存在とも見えるわけだが、おそらくハリルホジッチはあえてそれを期待して宇佐美を起用していたのではないかと思っている。

例えば、バイエルンにおけるロッベンである。彼もバイエルンの高速パスサッカーの中で異質なプレイをしている選手だが、パスサッカーの中でドリブルというアクセントが入ることでペースに緩急が付き、相手の守備を引き付けて他の選手がパスを受けるためのスペースが生まれるわけだ。

ただ残念ながら宇佐美の場合はロッベンほどの存在感、継続性、決定力が無いので代表にとってはそこまで必然性をもたらす存在になってはいないが、ハリルホジッチが宇佐美を先発で使う理由は間違いなくそこにあると思っている。

そしてハリルホジッチによって、宇佐美とは正反対な使われ方をしているのが原口である。この試合では、原口は負傷した山口蛍の代わりにボランチとして起用されたのだが、クラブではウイングを務めているのに、何故ハリルホジッチがそれ以外のポジションで使いたがるのか不思議に思う人は多いだろう。その理由は、原口が「ゾーンに対する感覚」を持っているからではないかと個人的には思っている。

ここでも散々書いている事だが、日本人はゾーンを保持する感覚、意識が低い選手が多い。人とボールに意識が行くと言うか、”サッカーに参加したがる”と言うか、火事場の野次馬のようにワラワラとボールサイドに群がってしまい、シリア戦にも何度かあったが、気がつけば相手にとって美味しいカウンターのスペースをプレゼントという場面があまりにも多い。

それに比べると、ヘルタでの原口は自分のゾーン以外で何かが起こっていても、基本的には関与しない。そして自分のゾーンになかなかボールが来なくても、受けに行ったりせず辛抱強く待つことが出来る。ヘルタに加入する前は原口も同じようなものだったので、ダルダイ監督の指導のおかげとも言えるが、いつまで経ってもゾーンディフェンスが下手な選手もいるので、本人が持っている特質だろう。

残念ながら、シリア戦では場所が浦和ホームの埼玉スタジアムというのもあってか攻撃に意識が行き過ぎて、ハリルホジッチが期待したようなバランサーとしては働けなかったが、原口に求められているのはそういったポジションバランスを修正する、チームをノーマライズする役割なのではないかと思う。

これから最終予選に向けて、香川や本田、岡崎ら欧州組のスターが嫌でも注目を集めるのだろうが、宇佐美と原口の役割、使われ方にこそハリルホジッチのチーム作り、コンセプトが見えて来るように思うのだ。