旧閑ガゼッタ

「得点よりも、香川にとって”今までの栄光”を捨てた事に意義がある」ドイツ・ブンデスリーガ第26節 ボルシア・ドルトムント-マインツ

バイエルン戦、ELのスパーズ戦と大事な試合で先発から外れる事が多かった香川が、大差の3位とはいえリーグ戦でバイエルンを破る金星を挙げたマインツとの上位対決で先発に復帰した試合。

香川が3ヶ月ぶりに今シーズン5点目となるゴールを決めたのと、試合の途中でドルトムントのサポーターが心筋梗塞で亡くなった事で試合の話題がほとんど持って行かれてしまったのだが、個人的には結果云々ではなく、香川にとって重要なターニングポイントになる試合だったと思っている。

もっとも香川自身の調子としてはトラップが不安定で、ボールをロストする場面も多くて決して良いとは言えなかった。が、トゥヘルに求められている高いインテンシティを保つプレイをやり遂げよう、今までの自分を変えようとする強い気持ちを感じた事が、今までとは全く異なっていたポイントである。

従来の香川は、運動量こそ多いもののスプリントの割合が少なく、中盤に下がってフラフラしながら足元でボールを受け、バックパスなどショートパスを交換しながら前を向くタイミングを探り、そこから大きな展開をしてからゴール前に詰める、守備ではパスコースは切るけども奪いに行く事はしないというのがプレイスタイルだった。

しかしこの試合では、香川はほとんど中盤には降りて来ず、足元ではなくてDFの裏へ飛び出したり、単に正対して足元で受けるのではなく、半身の状態で受けてからマークを背負ってターンを試みるなど、チームメイトと同様に攻めのスピードを意識したプレイをやろうとしていた。

結果的に、やはりまだ不慣れなところがあってそういうトライ自体はあまり成功しなかったが、例えミスになったとしても、すぐに体を寄せて相手にフリーな状態でパスを出させない、可能なら再びボールを奪いに行く、攻撃から守備への切り替わりが非常に早かった。パスコースを切ってディレイさせるのではなく、アタックが連動して早いタイミングでボールを奪い返すチームとしての意思統一が出来ていた。

変則的な3バックだったバイエルン戦とスパーズ戦とは異なり、マインツ戦はコンベンショナルな4-2-3-1、さらにマインツは4-4-1-1のコンパクトな守備で、ボールが自陣から遠い場合はトップ下の香川にがっちりマンマークを付けていたので、今までだったら完全に存在を消されかねない状況だったが、完璧では無いにせよそれなりに存在感を出せるようになった事は心強い。

それまでブンデスリーガで全く通用していなかったのならともかく、クロップのもとでリーグ優勝を決めた原動力になっていた、そしてシーズン前半は完全にチームの中心になっていた自分のスタイルを捨て去るのは、香川にとっても大きな傷みを伴う努力だったろう。、

トゥヘル監督にとっても、香川がコンセプトにフィットしてくれる事で選手層が厚くなるのはもちろん、変則3バックじゃなくてサイドが安定する4-2-3-1の戦術が選択できるようになるメリットは大きいのではないだろうか。

しかし香川にとってはやっと意識改革のスタートに立ったところ。ロイスやムヒタリアン、オーバメヤンと比べると動き出しのコースやタイミングが合ってないし、チームメイトから早いタイミングでパスが来た時に予測が出来ていない、つまり「3人目の動き」の1人目や2人目になれても3人目が出来ないという欠点があり、まだまだ改善の余地はある。このまま妥協する事無く、どんどんチャレンジを続けてもらいたいものである。