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「”佐々木メソッド”の限界と共に訪れる、なでしこジャパン黄金期の終焉」リオ五輪女子サッカー・アジア最終予選 日本-韓国

初戦のオーストラリアに敗れ、第2戦目にして是が非でも勝たなければならない立場になってしまった韓国戦。

日本は序盤こそ横山のキレの有るドリブルでチャンスを作るものの決定機をものに出来ず、後半になって横山に疲れが見え出すとみるみるうちに攻め手が無くなり、何度も韓国に危険なカウンター攻撃を浴びる始末。それでも日本は後半39分に、川澄のクロスを韓国のGKとDFが交錯し、ボールが裏にいた岩渕の頭に当たり、それがゴールに吸い込まれるラッキーな得点で先制するも、直後に今度はGK福元と熊谷が交錯してこぼれ球を押し込まれる同じようなミスで同点に追いつかれ、ロスタイムの決定機も岩渕が逃してしまってドローで終了。日本は自力突破の可能性が消え、とうとう本当の崖っぷちに追い込まれた。

確かに結果だけを見ると日本は勝ちを逃した試合なのだが、正直言って内容的には韓国のほうが上回っていたと言わざるを得ない。日本ボールになるといち早く自陣に戻ってゾーンを固める韓国に対し、日本は緩くて短いパスを足元へと繋ぐだけで、チームとしてゾーンを崩す形、狙いというものが全く見えなかった。そして悪い時のザックジャパンのように、選手がボールサイドに寄せ集まって狭いスペースで無理な打開をしようとするので、ボールを奪われると広大なスペースを簡単に使われてしまう。逆に韓国はゾーンでバランス良くポジションを取っているので、セカンドボールをやすやすと支配していた。

今までのなでしこジャパンであれば、澤や宇津木といったキープ力と展開力を兼ね備えた選手がボランチにいて、そこからサイドチェンジでサイドの高い位置に基点を作り、そこにSBがオーバーラップをして分厚いサイド攻撃を仕掛けるのがパターンだったのだが、今大会はどちらも不在でボランチに展開力が無く、相手も日本を研究してFWが絶えず日本のボランチにプレッシャーをかけるために、結局は攻撃をスローダウンさせられ、サイドのスペースには蓋をされてオーバーラップも出来なくなってしまう。こうなると日本は手も足も出ない。

そこを佐々木監督は、宮間をボランチに置くことで問題を解消したかったのだろうが、宮間は守備力が低い上に、サイドチェンジよりもスルーパスをしたがるので、ことごとく相手のゾーンにパスを引っ掛けては守備に走らされるというマッチポンプの役割でしか無く、全く彼女らしいチャンスメイカーとしての仕事が出来ていない。何故か佐々木監督はずっと宮間のボランチ起用に固執しているが、明らかに選手の能力と戦術がミスマッチを起こしている。

なでしこジャパンにおける佐々木監督のメソッドは、4-4-2という緩い大枠の中で経験豊富な選手を要所に配置し、それ以外の選手を相手や日程によって入れ替える事でチームの幅を持たせて来たのだが、それによって柱となっていた主力がますます経験を実績を積む一方、パーツとなる中堅や若手との実力差が開いてしまい、主力に衰えが来て好調が持続しなかったりし始めると、柱を入れ替えても重みに耐えられず、建物が崩壊するという問題に直面しているように思う。

これと同じ問題は男子五輪代表にも起こっていて、相手は日本のパスサッカーを研究してフィジカルで押し通すようになり、日本はその圧力に負けてユースの世界大会に出場できず、ますます経験が不足するという悪循環に陥っていた。そこを手倉森監督は、それまでのパスサッカーを封印して守備を固めてカウンターのチームを作り上げ、不細工ながらもパラダイムシフトを果たして五輪の出場権を手に入れた。それぐらいの危機感を持つべき時期が女子にも来ている。

なでしこジャパンはもしかするとここから3連勝で奇跡の五輪出場を果たすかもしれないが、どのみち今の佐々木メソッドでの強化には限界が来ているのは間違いない。手倉森監督の手段が決して正しいとは言わないが、澤と宮間が抜けた後の戦力をフラットに見て、彼女らが最大限に活きる戦術を構築できる監督に交代すべきではないだろうか。

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