サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「後半の変貌は、トゥヘル監督に対する香川の反乱だったのか?」ヨーロッパリーグ ベスト32 第1レグ ボルシア・ドルトムント-FCポルト

ヨーロッパリーグベスト32の中でも屈指の好カードとなった試合は、ホームのドルトムントが多数のチャンスを作って圧倒するも決定力に欠けて2得点に終わったが、ひとまずポルトにアウェイゴールを与えず第1レグを折り返した。

この試合については、ミムラユウスケ氏がNumber上で「トゥヘル革命」と称し、グアルディオラのコピーではないと主張するトゥヘルが2つの奇策で勝利をつかんだように書かれているが、前半戦のポゼッションサッカーはバルサ時代のペップコピーだとすると、後半戦のインテンシティサッカーはバイエルン時代のコピーだし、実際に試合ごとにコロコロフォーメーションやスタメンを変える策もバイエルンで頻繁に行われていた事である。そういう意味ではトゥヘルが編み出した奇策ではない。

そんな事よりも個人的に興味深かった点は、前半と後半の香川というかドルトムント自体のプレイが全く違っていた事である。前半のドルトムントは、攻撃時には左SBのシュメルツァーが高い位置に上がって3バックのようになり、香川はロイスと並んで3-2-4-1の2列目センターに固定され、後ろからの縦パスをバイタルで受ける役目に専念していた。

前半戦なら、香川はインサイドハーフで頻繁に下がってボールに触り、DFラインでポゼッションしつつ相手を徐々におびき出し、一瞬の隙を突いてオーバメヤンやSBギンターが香川のパスに飛び出すというのが必殺パターンだったのだが、前線で選手が張ってマークを常時受けている状態になると、香川もオーバメヤンも良さが生きなくなって来る。

ただ何度も書いているようにこれはトゥヘルの確信犯で、ポゼッションからの緩急サッカーから、常時高いインテンシティでひたすら攻守の切り替えを早くし、判断の余地が無いマシーンのようなサッカーを目指しているのだろう。そして香川もその考えを受けて、あまり得意でない攻守の競り合いや狭い中でのボールキープに積極的にチャレンジしていたようだ。

ところが、後半になると突然香川が以前のように下がってボールを受けてはスペースを探してフラフラと上がるプレイをし始める。すわ香川のトゥヘルに対する反乱かなと思ったのだが、試合の前半では香川に対してもっと切り替えを早くするようにと怒鳴っていた鬼のトゥヘルも、何故か後半は仏のように静かなまま。そしてポルトが疲れたのもあるのだろうが、実際に香川が自由に動くことで目に見えてドルトムントのチャンスは増えたのだ。

意地悪な見方をすると、トゥヘルが香川を更生させるのを諦めたのかもしれないが(笑)、ここはある程度容認したと見るほうが自然だろう。前半はゴリゴリと押しまくるサッカーで相手を疲弊させたところで、スペースが出来た後半にポゼッション攻撃を仕掛けるプランだったのだとしたら、トゥヘル監督もなかなかの策士である。ポゼッションドルトムントにいつでも戻れるという余地を残しながら、どこまでインテンシティの高いサッカーを実行できるかがトゥヘル監督にとっての後半戦におけるテーマなのかもしれない。

あと香川について少し気になったのは、シュートやクロスの場面で足を滑らせてバランスを崩してしまう場面が多かった事。前半にバイタルでフリーになってからのシュートや、左サイドからのクロスを放って倒れこみ、ロイスのシュートをまた体に当ててしまった場面など、ピッチが濡れて滑ったのかもしれないが、何となく香川の上半身がゴツくなって体幹のバランスが崩れているように思えるのだ。

香川に今まで以上のインテンシティを求めるならば、体重を増やすことはある意味当然の手段ではあるのだが、実際にマンUではそれをやって敏捷性が落ち、プレイの切れが無くなった事を香川が忘れたわけではあるまい。それが単なる杞憂や気のせいであればいいのだが・・・引き続き注目しておきたい部分である。

モバイルバージョンを終了