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「香川のゲームメイクをトゥヘルが拒絶するのは、あの偉大な監督の影響?」ドイツ・ブンデスリーガ第19節 ボルシア・ドルトムント-インゴルシュタット

ウインターブレイク明けの前節は、胃腸炎のために欠場した香川が久々に先発復帰したインゴルシュタット戦は、相手の厳しいプレッシャーの中でなかなかボールを受けられず、後半10分にカストロと交代。チームは終盤にオーバメヤンが2点を奪って勝利したが、香川にとっては不本意な試合になってしまった。

香川は試合後のインタビューで、「自分の中で整理できていない」という言葉を繰り返したが、そう思う理由は非常によく分かる。この試合ではおそらくトゥヘル監督の指示で、香川は前半戦のインサイドハーフではなくてトップ下の位置でプレイしたものの、前半はほとんどボールが回ってこず、前半の終わりごろにサイドに流れるようになってチャンスを作り、後半からはボランチまで下がってプレイし始めたところで交代を命じられてしまった。

これじゃ香川でなくても、何で上手く行き始めたところで交代させられるのかと思うのは当然だろう。が、本来であれば最も香川にショートパスを預けてくれる存在であるはずのヴァイグルが、不慣れな速いスルーパスを出してはミスを連発、交代で入ったカストロはトップ下の位置からドリブルで突っかけるプレイをしていたのを見ると、トゥヘル監督が前半戦のポゼッションサッカーを捨てて、縦に速いサッカーを目指しているのが明白である。

香川が入る事でチームが自動的にポゼッションサッカーになってしまうのであれば、そういう選手は外すというのがトゥヘルの方針なのだろう。ウイニングチーム・ネバー・チェンジというのがサッカーではセオリーで、実際にレスターは堅守速攻を貫いてプレミアリーグで首位に立っているわけだから、トゥヘルの考え方は理解し難いと思うのが普通である。だが、良く考えてみると全く同じ思想を持って成功している監督が実際に存在している事に気づく。そう、先日シティへの就任が決まったグアルディオラ監督である。

グアルディオラは、バルサで一世を風靡したティキ・タカ・ポゼッションサッカーを作り上げると、バイエルンに就任してからはポゼッションしつつ速いサッカーに転換し、しかも対戦相手ごとどころか試合中にも3バックや4バック、時には2バックと猫の目のように戦術を変え、ロッベンやリベリというワールドクラスのドリブラーを擁しながら、彼らに依存しないチームとしての崩しにこだわって来た。監督よりも選手が偉くなる事を決して許さなかった、ファーガソン監督のマネージメントも参考にしているのかもしれない。

そう考えると、完成されて代えが効かない香川、ヴァイグル、ギュンドアンのポゼッショントリオをあえて捨てにかかる理由が見えてくるのではないか。ただし問題は、ドルトムントがバイエルンほどの選手層、サブのレベルを維持していないところで、この試合でも前線のポストプレイを受けたボランチやDFがダイレクトでインゴルシュタットのライン裏へとパスを出そうとしていたのだが、特に前半はそれがことごとくミスになっていてチャンスに繋がらず、香川が空気になってしまっていた。残念ながら、今のところはトゥヘルの方向性は絵に描いた餅というのが現状である。

しかし(トゥヘルにとっては)明るい材料もあった。後半23分に17歳のプリシッチが投入されたのだが、まさにスピードのある香川という感じで右サイドで切れのあるプレイを見せ、こういうサッカーだったらかえって香川よりも適しているのではないかと思うぐらいだった。もちろん香川にとっては理不尽で厳しい状況ではあるが、本田を見てもやはり監督の方針に自分がいかに合わせるかというのが大事なので、これも選手としての幅を広げる機会だと思って割り切るべきじゃないだろうか。

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