サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「ミハイロビッチが戦術を柔軟に変更できるのも、”忍者”本田のおかげ」イタリア・セリエA第22節 ACミラン-インテル

イタリア・セリエAも後半戦に入り、リーグ戦については既にナポリとユベントスの一騎打ちという様相を見せてしまっているが、インテルはチャンピオンズリーグ、ミランはヨーロッパリーグ争いをしているという事で、それなりに盛り上がったミラノダービー。

ミランのフォーメーションはいつも通りの4-4-2で、本田は右SHで先発、ボランチはモントリーヴォとクツカのペアに変更。インテルもお馴染みの4-2-3-1だが、SBは長友じゃなくてフアンとサントンのペア、1トップがヨベティッチでトップ下にはサンプドリアから獲得したエデルが早速先発に名を連ねた。

試合はダービーらしく序盤は激しいプレスの掛け合いで、珍しく本田もしょっぱなからスライディングタックルや激しいルーズボール争いを見せて肉弾戦を繰り広げる。が、20分ほどして試合が落ち着いてくると、インテルはサイドに流れるエデルにボールを集めて右ウイングのペリシッチとで数的優位を作り、ミラン左SHのボナベントゥーラが高い位置を張りたがる隙を突いて何度もサイドからクロスを上げるものの、CBのアレックスが集中力高くカバーして得点を許さない。

すると35分に、ミランはカウンターからアバーテのクロスに本田が飛び込むものの、シュートが相手にカットされてCKに。しかしそのショートコーナーからボールを受けた本田が、エデルの緩慢なマークを外して左足のクロスを上げると、ボールは鋭く落ちてアレックスの頭にピッタリ合ってミランが大きな先制点をゲットして前半を折り返す。

あまり中継では触れられていなかったが、ここでミハイロビッチ監督は目立たないが大きな戦術変更を行う。FWのバッカとニアン、ボランチのクツカとボナベントゥーラの左右を入れ替えて、本田のいる左サイドにニアンとボナベントゥーラが来るようにした。この狙いは、インテルの左SBフアンが守備優先なので、ニアンがサイドに流れる事でマークするフアンを低い位置に縛り付け、インテルの左ウイングにはアバーテを付ける事で本田が自由に動けるようになり、本田がボランチの位置まで中に入ってクツカをトップ下のように前に出し、インテルのボランチに対してプレスをかけるようにした。

これが効いてインテルは後ろと前線が分断されてしまい、何度も中盤でミランにボールをカットされ、試合のペースは一気にミランへと傾き始める。と思ったら、後半23分にイカルディが自ら放ったシュートのこぼれ球に反応すると、倒れこんでいたアレックスがイカルディに足を出してしまってPK。ところがこのPKをイカルディがタイミングを外そうとしてキックをミス、ボールはポストに当たってインテルはみすみす同点のチャンスをフイにしてしまう。

そうなると当然サッカーの神様はしっぺ返しをして来るわけで、その5分後に右サイドで数的優位になってフリーで抜け出したニアンがクロスを上げると、バッカがインテルCBミランダの裏からスルスルと抜け出し、ミランダの前でしっかり合わせてミランの2点目を決めてしまう。その直後にも、サントンが後ろ向きでボールをキープしようとしたところをボナヴェントゥーラに突かれ、中を経由してまたもフリーのニアンにパス、シュートは一旦GKハンダノビッチに阻まれるものの、こぼれ球を押し込んで3-0。これで完全に勝負あり。

まあPKが決まっていれば分からなかった試合だったが、インテルの敗因を1つ挙げるとすればミランをあまり研究してこなかった、というのはあると思う。エンポリのようにアバーテと本田のラインを分断してこなかったし、ミランの戦術変更に対して何も策が打てなかった。SBにフアンとサントンを起用した事も完全に裏目だった。本田としては長友に来られたほうがよほど嫌だっただろう。

ミランはクツカが陰のMVPだった。チームトップの運動量で絶え間なくプレスをかけ続け、本田に対してパスを受けられる位置に素早く動いてフォローするなど、攻守の潤滑油として活躍。勝手に動き回ってバランスを崩すベルトラッチと大違い。モントリーヴォの調子も上がって運動量が増えている上に、本田がインサイドハーフ的に働いているので中盤の安定感が抜群だった。

本田は彼自身が好むと好まざるとにかかわらず、こういう風にミハイロビッチの戦術的な求めに応じていろんな役割に返信する”忍者”のような働きで今後も固定されて行くような気がするね。

 

モバイルバージョンを終了