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「複雑なミランのカテナチオを支える”インサイドハーフ”本田」イタリア・セリエA第20節 ミラン-フィオレンティーナ

リーグ4位と好調のフィオレンティーナをホームに迎えたミランの試合は、開始わずか4分にGKのフィードからボナヴェントゥーラのスルーパスを受けたバッカが、左サイドで切り返してファーに決める鮮やかな速攻でミランが先制すると、その後は自陣にきっちりカテナチオの壁を築いてフィオレンティーナの攻撃を封じ込め、終盤に追加点を奪うイタリアのお手本のようなサッカーで完勝した。

フィオレンティーナのフォーメーションは強力なサイドアタックが特徴の3-4-3。それに対して4-4-2のミランがどういう守り方をするのかをまず注目してみた。

試合が始まってすぐ目についたのが本田のポジショニング。いままでだと攻撃時に中へと入り込む事が多かった本田だったが、この試合では守備時に中へ絞ったポジションを取って、中盤に下がってボルハ・バレロと絡むマリオ・スアレスとのラインを遮断する狙いを見せていた。そうなるとWBのマルコス・アロンソが空くのだが、そこはアバーテが縦を切ると同時に本田もサイドに戻ってカバーする事で対応していた。

そのスライドする守備は本田とアバーテだけではなくて、彼ら2人でサイドの人数が足りなくなるとロマリーニョが参加し、空いたスペースはモントリーヴォが下がって埋めるなど、チーム全体としてディアゴナーレの連携でポジションに穴を開けないように戦術が徹底されており、前半のシュートはミランが得点になった1本のみ、フィオレンティーナもシュートがたった2本だけという、ラインこそ上げ下げしないがまさにイタリアの真髄と呼べるカテナチオ・ゾーン・ディフェンスであった。

当然、フィオレンティーナもミランの守備に対策を立てて来て、後半はDFから早いタイミングでWBにフィードを送ってミランの中盤守備をすっ飛ばす作戦に出て来た。これにはミランも最初は手こずってフィオレンティーナに試合を支配されるが、そこにはSBが高めの位置を取って相手のWBに当たり、SHがカバーに回るという形でミランも対応する。

この策はミランの攻撃にも変化をもたらした。前半は縦のスペースを消すためにあまり高く上がって来なかったアバーテが、本田のキープから何度もオーバーラップを見せるようになり、本田もその動きを上手く使ってパスを繋ぎミランの攻撃にリズムをもたらす。後半35分にボアテングが入ってからは、アバーテが中に入って本田がサイドに張る5-3-2のようなフォーメーションになり、慎重にフィオレンティーナの攻撃をシャットアウト。そして最後にバロテッリが復帰登場した直後にボアテングが2点目、これで勝負は決まり。

とにかくまるでチェスのような戦術のせめぎ合いで見応えがあった試合だったが、ミランのカテナチオを支えたキーマンを上げるとすればやはり本田だろう。マリオ・スアレス、マルコス・アロンソ、ボルハ・バレロという強力な左サイドをアバーテとの連携で抑えこみ、SBの位置に下がっても安定したカバーリングを見せ、守備時に自陣ライン際に居たかと思えば、攻撃に転じると前線まで走っているというように、攻守に凄まじい運動量を見せていた。

本田については、「やはりトップ下で得点やアシストという結果が欲しい」という意見は多いし、彼自身もそう思っているのだろうが、今やってる役割を見ると間違いなくインサイドハーフのそれである。香川と同様に、本人が好むと好まざるとにかかわらず、チームの中での位置づけは既に変わってしまっているのかもしれない。個人的には、本田はインサイドハーフのほうが良いと思っているのだが、問題は本人がそれで納得できるかどうかである。そこを是非ライターの方々には突っ込んでもらいたいね。

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