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「リーベルの本気を引き出した時には、既に広島の力が尽きていたという勝負の残酷さ」クラブW杯 準決勝 サンフレッチェ広島-リーベル・プレート

1-0という最少失点差、前半で4つの決定機を作った広島に対し、リーベルの決定機はその半分という結果を見れば、勝てる試合だった、リーベルを追い詰めたと言う人は多いだろう。しかし個人的には、「世界との差はあと一歩だが、その一歩が遠い」という状態よりは半歩近づいたが、その半歩も決して短くはないなという印象を持った試合だった。

確かに、リーベルは広島をリスペクトしてきっちり研究しており、広島の攻撃の起点である青山に対しては、SHのサンチェスが中に絞ってボランチと2人がかりでマークし、ドゥグラスと柏というサイドのキーマンにはSBとSHが挟むようにして対応するなど、広島の得意なビルドアップを徹底的に破壊して来た。

そのため試合の序盤は広島は全く自分達のサッカーをしてもらえず、リーベルの完全なペースになるかと思われた。が、この試合のリーベルは中盤はいいけれどもDFの集中力、ポジショニングが雑で、前半26分に柏からのロングパスに皆川が抜け出してGKとの1対1になる場面を作ると、31分にはドゥグラスの飛び出しからクロス、33分には茶島のミドル、40分に青山のスルーパスから皆川がトラップをミスするもシュートまで持ち込むなど、立て続けに決定的なチャンスを作り出す。

そして後半になるといよいよリーベルが攻勢をかけ始める。前半は守備のカバーに比重がかかっていた両サイドが高い位置取りをし、プレスで広島のミスを誘ってセカンドボールを拾って分厚い攻撃を仕掛けて来る。が、広島も粘り強い守備でリーベルの攻めを凌ぐと、SBの上がったスペースを突いてカウンターで反撃する。

無得点で後半になると、さすがにリーベルも余裕が無くなって本気を出して来たわけだが、逆に言えば広島もそれにしっかり耐えてカウンターも出せていたので、ここで広島が先制点を取れていればリーベルを焦りから自滅させられる可能性は高かったと思う。しかし、中2日の試合が続いていた広島の選手は足に来ており、2度ほどあったドゥグラスがフリーで飛び出した場面でも有効なクロスが上げられなかった。

逆に後半27分、右サイドからのFKに飛び出した林がパンチングではなくキャッチをしに行ってしまったために、相手と交錯してボールをファンブルしてしまい、こぼれた球をルーカス・アラリオに頭で押し込まれてリーベルが先制したわけだが、確かに林のミスではあったものの、他の選手も反応が鈍くなっていてゴール前でしっかり競れなかったのも要因だったように思う。

佐藤を投入して浅野をトップ下にした森保監督の采配に批判はあるようだが、既に広島には反撃の余力が残っておらず、アルゼンチンならではの個人スキルを活かして守りに入ったリーベルに対しては、おそらく誰をどこに入れても逆転が難しかったのは間違いない。唯一勝つためのゲームプランが崩れた時点で、監督に出来ることはほとんど無かったのだ。

とは言え、過密スケジュールや怪我人即続出の中で、これだけの試合を見せた広島は立派だった。ただしあと半歩の差を詰めるためには、単にパスを回す能力だけではなくて、リーベルの選手のように必要な時にはプレスの隙を見逃さず、個人で2~3歩の距離を前に運べるスキルが必要だと改めて感じたのも事実。おそらく広州恒大との試合になるであろう3位決定戦では、そういう点で成長した部分を見せてもらいたい。

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