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「あえて香川をリーグ戦2試合連続でベンチスタートにさせた、トゥヘル監督の本当の狙い」ドイツ・ブンデスリーガ第16節 ボルシア・ドルトムント-フランクフルト

昨日はヨーロッパリーグの決勝トーナメント1回戦の組み合わせが発表され、ドルトムントの相手はポルトに決定。クロップのリバプールやマンU、ナポリといったビッグネームでは無いにせよ、チャンピオンズリーグでも常連の強豪であり、ドルトムントはいきなり厳しい相手との対戦になってしまった。とは言え、ヨーロッパリーグの優勝を狙うためにはどこかで当たらないといけないレベルの相手ではあるので、一喜一憂しても仕方ないと思うべきだろう。

その2位通過で終わったヨーロッパリーグPAOK戦の後に行われたフランクフルトとのリーグ戦。前線はロイス、オーバメヤン、ムヒタリアンの3人で、中盤はカストロ、ヴァイグル、ギュンドアンという面子。PAOK戦に先発した香川はリーグ戦では前節のヴォルフスブルク戦に続いてのベンチスタートになってしまった。

対するフランクフルトは長谷部がボランチで先発との予測で、どういうフォーメーションにして来るのかと思ったら蓋を開けてビックリ、表記上は長谷部がアンカーの4-1-4-1だが、守備時は両SBがロイスとムヒタリアンをマークして中に絞り、SHがSBの位置まで下がってサイドのスペースを埋めるという、6-3-1という超極端なドン引きサッカーで来たのには驚かされた。

そして前半6分には早速そのプランが当たり、フランクフルトGKフラデツキーのロングキックを受けたセフェロヴィッチが左サイドを突破すると、折り返しのスルーを受けたマイヤーがゴール左隅に正確なミドルを突き刺してフランクフルトがまんまと先制する。

が、このフランクフルトの戦術には明らかな難点があった。SBが基本的にマンマークなのでラインがほとんど押し上げられず、しかしオフサイドのギャップを作らないためにフランクフルトのCBは常にラインを意識したポジションを取らないといけないという、矛盾した対応を強いられていたのだ。

すると24分に、ヴァイグルに入ったボールを長谷部がカバーして縦を切ると、前に出てきたフンメルスにすかさず横パス、そこからラインギリギリで抜け出したオーバメヤンにスルーパスが渡り、折り返しをムヒタリアンがやすやすと決めてドルトムントが同点に追いつく。ヴァイグルとフンメルスというパスの配給元に対して、前線4人で守り切るのはいかにも無理があった。

42分にドルトムントはロイスが怪我をして香川に交代すると、香川は早速シュメルツァーに浮き球のパスを通してドルトムントに創造性を与え、その流れでPA内でボールを受けたカストロがメドイェヴィッチに後ろから倒されPK、メドイェヴィッチは2枚目のイエローで退場してしまいフランクフルトは大ピンチ。しかしPKはオーバメヤンが右に外してしまって同点で試合を折り返す。

後半もフランクフルトが5-3-1で守り倒す展開は変わらないが、香川が意図的にインサイドハーフの位置からバイタルエリアに入ってボールを引き出す動きでリズムを作ると、12分にはギュンドアンにボールを預けて香川がラインの裏へ飛び出すと、オフサイド気味だったがギュンドアンがロングワンツーを香川に合わせ、アウトサイドで流したボールをオーバメヤンが押し込んでドルトムントがリードする。その4分後にも、ショートコーナーから香川が繋ぎ、ムヒタリアンのシュートをゴール前にいたフンメルスが受け、そのまま蹴りこんで3点目。試合終了間際には交代で入ったラモスも得点して結局4-1でドルトムントが大勝した。

ヴォルフスブルク戦も試合を決める得点を決め、この試合も相手が1人少ないとはいえ、出場してからはドルトムントのゲームメイクを一手に司っていた香川を何故トゥヘル監督がベンチスタートにしたのか解せない人は多いと思う。ただ個人的には、これからヨーロッパリーグの決勝トーナメント、リーグでバイエルンとのマッチアップで勝ち抜く上で、選手層の厚みにトゥヘル監督が相当な危機感を感じている現れではないかと思っている。

おそらくPAOK戦では、サブ主体といえども香川の手足になってくれれば良い試合が出来るのではないかと思ったのだろうが、蓋を開けてみればその期待を裏切る酷い内容だったので、消化試合気味のカップ戦ではなくて本番でサブを鍛える腹をくくったのだろう。それは、CBにレギュラーのソクラティスではなくてベンダーを先発させた理由にもなっている。

カストロは、ウイングとしては準レギュラーとしての地位を獲得しているがインサイドハーフとしてはまだフィットしておらず、シャヒンがまだ一線に復帰できない以上は、誰かを香川の代役として育成しないといけない状態だった。そういう観点で見れば、この采配は理にかなったものがと言えるのではないだろうか。

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