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「この1年間の戦術的なツケが、大きな代償となってしまったセレッソ」J1昇格プレーオフ決勝 アビスパ福岡-セレッソ大阪

本当は日曜の夜に見る予定だったんだけど、あまり酒が入った状態でこういう緊迫した試合は見たくなかったので、休肝日の月曜日に改めてじっくりと見させてもらった。

勝ち点15という大きな差がついたリーグ3位と4位の対戦という事で、もっとアビスパ寄りの試合内容を想定していたんだけど、やはり選手個人個人のクォリティで明らかにセレッソは上回っており、全体的なペースを握っていたのはセレッソのほうだった。

引き分けでもJ1昇格が決まるアビスパは、表記的には3-4-3だけど中央の3バックがかなり中に絞っているためWBがほとんど上らず実質的には5-4-1というフォーメーションでガッチリ守る。が、その代償として1トップのウェリントンが完全に孤立して攻撃の基点が全く作れない。

対するセレッソは4-4-2で見た目には何となくゾーン・ディフェンスっぽいが、2トップが高い位置からプレスをかける割に中盤がバラバラで全く連動しておらずで無駄走り状態、4バックだけはラインを作っていはいるが1人がボールホルダーにアタックすると、他の3人がカバーですっと下がってしまうためにラインを高い位置にキープできない。

互いにそういう守備なので前半からかなり中盤が間延びした状態になっていたのだが、途中からセレッソの山口が積極的にサイドチェンジを出してアビスパのSBの前のスペースを使うようになり、SBの田中祐介と丸橋がオーバーラップしてサイドに1枚しか居ないアビスパに対して数的優位を作って攻め立てる。

井原監督は、24分にハムストリングスを痛めた酒井宣福に代えて金森を投入、しかしサイドではなくトップ下のような位置に置くことによってウェリントンをサポートさせるものの大勢は変わらず。そして後半15分に中盤でボールを受けた玉田が関口にボールを預け、そこからのスルーパスに抜けだしてアビスパGK中村航輔よりも先に触ってセレッソが先制点を決める。

これで得点が必要になったアビスパは一転してWBが高い位置取りをするようになり、サイドの形勢が逆転するもののセカンドボールがなかなか拾えず連続攻撃とまでは行かず。逆にセレッソにカウンターのチャンスが増えて、玉田に決定機が訪れるが今度は決められず。もしこの時間帯にセレッソが追加点を取っていれば勝負が決まっていたはずだった。

そして運命の後半42分。セレッソが中盤でボールを奪ってカウンターかと思われたのだが、左SB丸橋が中村北斗にボールを奪われ、アビスパが左サイドへとボールを展開、最後は金森のスルーパスからオーバーラップした亀川がクロスを放つと、ボールは中にいた中原の股間を抜けて逆サイドに上がっていた中村の足元へと届き、中村が角度のないところから豪快に蹴りこんで劇的な同点ゴール。セレッソは最後のセットプレイでキム・ジンヒョンが上がって勝負をかけるもののエジミウソンのヘディングはゴール上に外れて万事休す。

セレッソは失点場面で、ボールを奪われた丸橋がいったんはファーストディフェンスをしに行ったものの、その後は諦めて戻るのを怠ってしまい、対面の中村北斗が完全なフリーになってしまったわけで、確かに直接的には丸橋のボーンヘッドが響いた失点ではあったのだが、その前の場面で山口が前線に駆け上がっていて守備のバランスが完全に崩れており、その後はブラジルW杯のザックジャパンのようにマークとカバーの動きがバラバラになってしまった事が決定的なクロスに繋がったと言える。

そこだけではなく、セレッソは序盤のFWだけプレスを見ても守備組織の統一感の無さは明らかで、今期は監督がコロコロ代わって戦術が全く浸透できていなかったセレッソと、最後まで良い意味で自分達のサッカーを信じて貫けたアビスパとの差が、天国と地獄を分ける最大のポイントでは無かったかと思う。

ただ、アビスパもこの試合を見る限りではこのままJ1に上がっても松本山雅のように相当苦戦しそうで、レンタルで来ている中村航輔の慰留も含め、これから来期のスタートまでにどれだけ的確な補強が出来るかが焦点になって来そうだ。スポンサー数は飛躍的に向上しているとは言え小口が多いだけに、福岡市全体のバックアップ体制が望まれる。

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