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「ある意味香川の犠牲によって生まれた前半の2得点」ドイツ・ブンデスリーガ第14節 ボルシア・ドルトムント-シュツットガルト

ツォーニガー監督が更迭された直後のシュツットガルトに対し、公式戦連敗中だったドルトムントが4-1と快勝したこの試合。そんな中で、香川自身は60分で交代とチームから取り残されてしまったように見えたかもしれない。

トゥヘル監督はそれまでのベストメンバーからフンメルス、ギンター、ヴァイグルの3人が抜けてしまい、その代わりにベンダー、ピシュチェク、カストロを入れて刺激を与える作戦に出て来たのだが、これでドルトムントの中盤のバランスが大きく変わってしまい、もともと周りとのコンビネーションやパス交換の中で活きる香川にとって、一気に歯車の軋みを生じる結果になってしまった。

普段ならインサイドハーフでプレイしているギュンドアンがアンカーになり、カストロが右のインサイドハーフになったのだが、カストロがほぼウイングの位置まで上がったポジションを取るため香川が下がり気味のバランスになり、さらに左ウイングのロイスが高い位置に張りっぱなしで中盤に降りてのフォローがなく、香川の周りに味方がほとんどいない状態になっていた。

そしてギュンドアンは、ヴァイグルのようにショートパスを繋いでリズムを作るよりも1発の縦パスを狙いたがり、利き足が右なので余計に香川にボールが来ず、香川がバックパスからポジションを変えてリターンをもらおうとしても、ギュンドアンが縦や右サイドに展開したがるので香川のインスピレーションがそこから先に行かない。おまけにシュツットガルトの右ボランチルップが、香川がバイタルに侵入するとほぼマンマークで付いて来たので、余計に孤立する羽目になってしまった。

前半の途中からベンダーも香川にパスを出してくれるようになったが、タイミングが合わなくてパスが流れたりと、それまでだったらフンメルスとヴァイグルの2箇所からパスを受けられていた香川にとっては、どちらの供給源も断たれてしまったわけで、ボールに触ってプレイリズムを作る選手としては非常に厳しい状況だったのは確かである。

ただ逆説的に言えば、その香川の孤立によってチーム自体が恩恵を受けた事も事実である。前半のシュツットガルトは4-4-2のゾーン・ディフェンスっぽい守り方をしていたのだが、香川の動きによってボランチの1枚がマークのために移動するため、せっかくの4-4ゾーンが全く機能していなかった。

ドルトムントの2点目では、CBのベンダーがボールを持って持ち上がるのだが、香川が前に出る動きにルップが付いて行ってしまったために、ベンダーに誰もプレッシャーに行かない形になり、余裕を持ったパス出しから中に入ったカストロがヒールで繋いでオーバメヤンがループシュートを決めたもので、守備組織の観点から見て理解しがたい対応であった。

さすがにこれはまずいと思ったのか、シュツットガルトは後半になって高い位置からプレスをかけるようになり、それが香川にとっては逆にパスを受けたり出したりするスペースが生まれ、ようやく香川らしい軽快なプレイが出てきたなと思ったら後半15分でヴァイグルと交代。カストロも右インサイドハーフよりは左のほうがバランスが取りやすいのか、香川がいた頃よりも中盤のバランスが良くなり、そのからドルトムントは2点を追加してしっかり逃げ切りを果たした。

まあ、これで香川がいきなりスタメン危機という事にはならないだろうし、長い目で見ればカストロが香川のポジションでそれなりにプレイできるようになるのは歓迎すべきだろうが、香川自身も周りのメンバーが変わってもアジャストできる幅を持った選手になる必要があるだろう。

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