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Jリーグは”サッカーの戦術”を諦めつつあるのだろうか?

今年のJリーグもいよいよ大詰めとなり、優勝・残留争いはもちろんですが、移籍のニュースも出始める季節になりました。

その中で最近驚かされたのが、柏の吉田達磨監督とFC東京のフィッカデンティ監督の退任の噂、そして名古屋の小倉GMの新監督就任という話。そして吉田監督については、昨日正式に退任の発表がされました。

吉田監督については、クラブ側のコメントに「1つはやはり成績。それ以外でいうと、いろんなチームビルドの問題」とある通り、1stステージ14位、年間順位9位という成績が問題視された模様です。

しかし、ACLではベスト8という成績を残していますし、どちらかと言うとマンマーク志向が強かったネルシーニョのサッカーから、世界の先端である4-1-4-1ポゼッションサッカーへのコペルニクス的転回をしつつある事を考えたら、個人的にはよくやっている方なのではないかと思うのですがねえ。

そして新監督には、ブラジル1部アトレチコ・パラナエンセ前監督であるミルトン・メンデス氏と交渉中だそうです。もちろんそのサッカー自体は見たことありませんが、まあブラジル人監督が4-1-4-1ポゼッションを継承する可能性はゼロでしょうから、またチーム作りは一からという話になってしまいます。

しかも、吉田監督を起用した理由は「アカデミーからシームレスなサッカーをしていく」だったのに、これをたった1年で反故にしてしまうという事でもあります。こんなブレブレの方針では、バルセロナに追いつくことなど夢のまた夢ですわな(苦笑)。

そしてフィッカデンティ監督。もちろんまだ噂の段階ですし、本人が辞めたがっているという可能性もあるでしょうが、もしクラブ側の意向だとすると、4位という過去最高の年間総合順位になった年に退任させるというのはいかにも不可解です。

確かに前節は優勝争いのライバルである浦和に自滅とも言える負けを喫しましたが、それは監督だけの問題ではなく、戦術的なミスマッチが起こった時に選手自身が対応できなかった事が大きいと思っています。ブラジルW杯のコートジボワール戦もそうでしたが、サッカーの試合でそういう事態は珍しくないわけで、それを全て監督の力量でカバーするというのは無理な話です。

常々、Jリーグにはゾーン・ディフェンスが根付いていないと嘆いている私ですが、それは監督よりも選手がそういう組織戦術の素養が無い事に問題があると考えていて、イタリア人の監督からしたらJリーグを指導するのは、米を作るために開墾から始めているような気持ちでしょう。それを2シーズンで退任させるというのは、いかに戦術の浸透という仕事が軽んじられているかという証明です。

最後に名古屋の小倉監督就任。これはもう何と言って良いのやら・・・百歩譲って戦術のプロをコーチとして据えるならまだ話は分かりますが、単独体制なら無謀も良いところです。しかもザックからのオファーを蹴って決めたという話ではありませんか。

名古屋は、ピクシー、西野氏と決して戦術的には明るくない監督を起用して来た歴史はありますが、今回はさらに輪をかけてグレードアップ(笑)。ぶっちゃけ、名古屋に限らずJリーグクラブの上層部はサッカーに戦術というものが存在している事を理解していないのではないかと思ってしまいます。単に実績があって人間性に優れた人であれば良い、と考えているようにしか見えません。

その中でかすかな救いなのが、甲府の新監督として現ツエーゲン金沢監督の森下氏の噂が出ている事。今の金沢は成績低迷中ですが、やっている戦術は正統派のゾーン・ディフェンスで、甲府のチームカラーにピッタリと合った人選だと思います。

いい加減、Jリーグでも戦術的に見応えのある試合が増えてくれればと思っているのですが、かつての磐田-鹿島全盛期と比べてもその意味では逆に後退しているように思えてなりませんなあ・・・ゾーン・ディフェンスをやっているチームが増えているユースの選手が育って来ると、また変わって行くんでしょうか。

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