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「バイエルンに勝つにはこれしか無い策を成功させた、ベンゲルのリアリズム」UEFAチャンピオンズリーグ グループF アーセナル-バイエルン・ミュンヘン

ここまでチャンピオンズリーグのグループリーグで格下のディナモ・ザグレブとオリンピアコスに2連敗と、まさかのスタートになってしまったアーセナル。第3節は優勝候補筆頭クラスのバイエルンが相手とあって、ホームとはいえアーセナルの3敗目は濃厚かと思われたのだが、蓋を開けてみれば何とアーセナルが2-0で完勝。これで一気に決勝トーナメントへの望みが復活した。

アーセナルのフォーメーションはいつも通りの4-2-3-1。これに対して複数のフォーメーションを使い分けるバイエルンが採った形は4-3-3。グアルディオラ監督の狙いは明らかで、4-2-3-1に対してサイドで数的優位を作りやすい4-3-3を使い、しかもドゥグラス・コスタとミュラーをワイドに張らせて、クロスから絶好調のレヴァンドフスキの決定力にかける戦略だった。

その狙いは確かに当たり、試合は序盤からバイエルンがボールを支配し、シャビ・アロンソを中心とした正確なサイドチェンジでサイドに基点を作り、そこにビダルやチアゴ・アルカンタラのインサイドハーフやSBが絡んでサイドから分厚い攻撃を仕掛けて来た。が、アーセナルはラインを上げずに4-4のコンパクトなゾーンを自陣に作り上げ、サイドを使われても真ん中をきっちり固める割りきった手段に出て来た。それでもバイタルエリアから際どいシュートは打たれたが、守護神チェフが全盛期を思わせるスーパーセーブを連発してバイエルンに得点を許さない。

そしてアーセナルが繰り出してきたもう1つの方策が、徹底したロングカウンター狙い。1トップのテオ・ウォルコットと左ウイングのサンチェスはあまり守備に参加せず、とにかくアーセナルがマイボールにしたらヨーイドンでバイエルンのDFラインの裏へと走る。ここにエジルのスルーパスが通るとビッグチャンスに繋げられるのだが、バイエルンの守護神ノイアーも至近距離から放たれたウォルコットのヘディングをあり得ない超反応で防いでしまう。

しかし後半32分に、カソルラのFKに対してノイアーが飛び出したのだが、そのボールをノイアーは結局触れず、ゴール前に飛び込んだジルーが体で押し込んで、前半は実に70%もボールを支配されていたアーセナルが逆に先制点を奪ってしまう。そしてロスタイムには、アラバのパスミスを拾ったベジェリンが持ち込み、クロスに合わせたエジルのシュートをいったんはノイアーが超反応で掻き出したように見えたが、ボールはラインを割っていて得点が認められ、これでバイエルンは万事休す。

ホームでの試合なのにプライドをかなぐり捨ててリアリズムに徹したベンゲル監督の覚悟、それに全力で応えた選手の底力が、この起死回生の勝利を呼び込んだ要員である事は間違いなく、見ていてとても感銘を受ける試合であった。バイエルンは、そのアーセナルに気迫負けしたような感じで、レヴァンドフスキもミュラーもいつものらしさが見られず完敗。しかしホームでは必ずリベンジに燃えてくるだろう。次の対戦が楽しみである。

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