サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「フランスW杯メンバーの監督同士の対決は、意外な戦術のマッチアップに」天皇杯3回戦 アビスパ福岡-町田ゼルビア

井原正巳と相馬直樹という、フランスW杯のメンバーが今度は監督として対決した、アビスパ福岡と町田ゼルビアの天皇杯3回戦。

ただ、どちらも現在はリーグ戦で昇格争いの大詰めを迎えているとあって、福岡は何と先発11人、町田も土岐田を除く10人がターンオーバーをして来たため、本当の実力的には優劣が分からない試合ではあったが、それだけに両チームの監督がどういう戦術的な練習を積んで来ているのかが分かってとても興味深い試合になった。

まず驚いたのが、町田がほぼ完璧なゾーン・ディフェンスを実現していた事。それも、しっかりと中盤はボールサイドの選手がアタックに行き、守備時でも中盤の逆サイドの選手は高い位置取りをしてカウンターに備えている。Jリーグでゾーン・ディフェンスっぽい守備をするチームは少なくないが、だいたいどこも守備時は中盤4人が均等に下がって水平にラインをセットする場合が多く、町田のように片上がりする陣形を取っているチームは本当に珍しい。川崎の時は、監督の指向と戦術が噛み合ってない印象があったが、さすが頭脳派の誉れ高い相馬監督はキッチリとゾーン・ディフェンスを会得して来た。

それに対して福岡の井原監督が取った戦術は、ブラジルW杯オランダ式の5バック。つまり、守備時は5人がラインを作って守備をセットし、クサビのボールに対してはDFが出て潰しに行き、中盤は早めのタイミングで相手の飛び出しをマンマークするというシンプルな形。連動した戦術組織よりもDFの個人能力を活かす守備というところが、かつてはアジアのリベロと呼ばれた井原監督らしいチョイスだ。ただ、その分攻撃の枚数は薄くなるので前線が強力でないと厳しくなる。

試合は、町田がゾーン・ディフェンスで福岡の攻撃を寸断して優勢に進めるが、福岡も5バックの固い守りで対抗し動きの少ない展開で前半を折り返すと、後半5分に町田がCKからペ・デウォンのヘディングで先制すると、20分にも同じくCKから久木野が2点目。福岡は前線の基点となっていたウェリントンを欠いて攻撃の形がなかなか作れず、前半0本、後半もシュート2本という寂しさで敗戦。平日にしてはまずまずの客入りになったサポーターを落胆させる内容と結果になってしまった。

町田はJ3で現在2位。リーグ戦は残り6試合で、首位のレノファ山口から勝点9、3位の長野パルセイロとは7の差になっている。試合数を勝ち点差を考えるとこのまま2位で終わる公算は高く、山口もJ2ライセンスを獲得しているのでJ2の21位とのプレーオフが待ち受ける事になる。町田の戦術完成度を考えると、J2の対戦チームは油断大敵である事は間違いない。

モバイルバージョンを終了