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「もちろんモダンな戦術だから単純に強いというわけではない」ドイツ・ブンデスリーガ第8節 ハノーファー-ブレーメン

まだ開幕から勝ちがなく最下位に沈んでいるハノーファーは、ホームで現在リーグ戦3連敗中のブレーメンと対戦。試合は攻撃的な戦術を採るブレーメンがボールを支配するものの、ハノーファーは清武を中心としたカウンターで応戦、後半11分に得た清武のCKをサネが決めた1点を守りきり、ハノーファーが今期初勝利を挙げた。

以前に、ドイツ・ブンデスリーガでモダンな戦術を駆使する新世代監督についてのエントリーを書いたが、ブレーメンのスクリプニク監督も間違いなくその系譜に連なる監督だろう。ブレーメンのフォーメーションは中盤ダイアモンドの4-4-2で、しかもハイプレスという相当に攻撃的なスタイルである。

対するハノーファーは今や戦術的にはクラシックと言える4-2-3-1。ブレーメンは、ハノーファーのマイボール時には2トップが2人のCBにプレッシャーをかけ、ダブルボランチにはトップ下とインサイドハーフが両側からサンドし、清武にはアンカーのフリッツがマークして来たため、ビルドアップを封じられたハノーファーはロングボールを蹴るしか無く、前半は清武の頭上をボールが通り過ぎるだけになってしまった。

しかしハノーファーは選手の出足自体は悪くなく、徐々にロングボールの跳ね返りを中盤で拾えるようになってからはカウンターを繰り出せそうな機会が増え始め、と言っても精度に欠けるのでなかなか清武が中央で前を向いてプレイする機会は出来ないが、清武もサイドに流れたりして基点を作れるようになり、オーバーラップする味方を使ってチャンスを生み出し始める。

そして後半11分にハノーファーがリードを奪ってからは、当然ながらブレーメンの攻撃がサイドパワーアップ。モダン戦術らしくサイドの高い位置に選手を置いてサイドチェンジを通し、そこから中へ切れ込み選手へのスルーパスやそれを囮に使ったクロスでハノーファーにシュートの雨を降らせるが、そこに立ちはだかったのは今やドイツ代表ではノイアーに次ぐGKと言われているツィーラー。至近距離からコースギリギリに打たれたシュートを片手一本で弾き飛ばすなど好セーブを連発、最後までブレーメンに得点を許さなかった。

いくら戦術的にはモダンでもチームが勝てなかったら意味が無いわけで、実際に最下位になったシュツットガルトやこのブレーメンは攻撃的で相手を押し込みはするものの、肝心のチャンスに決定力不足で点を取れず、手薄な守備をカウンターでやられるというパターンになってしまっている。チャンスを確実に決める力と、攻めながらも守備のポジションバランスを崩さない組織力が伴わないと、高度な戦術も絵に描いた餅になってしまうわけだ。日本もその辺はきちんと肝に銘じておく必要がある。

清武については、かなり相手に警戒されて荒っぽいファールを受けてしまっていたが、フィジカルコンタクトから逃げずにキープし、ボールが来なくてもウロウロせずに辛抱強く前線に留まって仕事をこなす姿勢は評価できる。サイドチェンジのキックが弱くてカットされる場面も2度ほどあったが、プレイのアイデアや精度はチームで抜きん出ている。やっぱり、もっと沢山ボールが来てプレイ機会の多い上位チームに早く移籍して欲しいなあ。

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