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過去のものになりつつある”欧州第1.5世代”本田の思想

本田が念願のトップ下でミラノダービーに先発したにも関わらず、平凡な出来に終わって敗戦を喫してしまった事で本田に対する風当たりが相当厳しくなっているようですね。

本田については、と言うよりもトップ下を好む日本人選手全てにおいて言えることですが、今の戦術傾向として4-3-3や4-1-4-1でアンカーを置くフォーメーションを採るチームが多く、そうなるとトップ下は完全にアンカーとマッチアップしてしまうので、よほど個人で打開出来る能力を持った選手でないと務まらないポジションになっています。はっきり言って、世界レベルでトップ下に置いて輝ける日本人選手は存在しないと言い切って良いでしょう。

その代わり、今の戦術において攻撃の中心となりつつあるのがインサイドハーフ。マークを受けやすいFWやトップ下に比べて比較的フリーでボールを持てるポジションであり、4-3-3などのトップ下を置かないフォーメーションでは、トップ下のようなチャンスメイクやゴールを決める役割を担っていたりします。その代わり、ウイングのフォローやSBが上がったカバーなど、守備意識や運動量が求められるポジションでもあります。

個人的には、本田はおそらく香川以上にトップ下よりもインサイドハーフ向きの選手だとずっと前から思っているのですが、それには本人が守備への意識を高める必要があり、現時点での本田はあまりそっちの方向に考えが行ってないような様子です。その辺は、ジーコジャパン後期になるまでトップ下へのこだわりを捨てず、ローマでトッティの控えに甘んじてワールドクラスになり切れなかった旅人中田を思い起こさせます。

海外移籍をした日本人選手には、大きく分けて3つの世代があると思っていて、1つ目は中田や小野、稲本、中村などシドニー五輪世代の選手。2つ目は岡崎、香川、本田、長友、吉田麻也、清武ら北京~ロンドン五輪世代の選手、そして3つ目は原口や武藤、南野といったプラチナ~リオ五輪世代の選手です。

第1世代と第2世代の最も大きな違いは「ポジションやプレイへのこだわり」だと思っていて、自分がやりたいプレイやポジションでは非常に高い能力を発揮するものの、少しそこから外れてしまうと途端に並以下の選手になってしまう傾向があり、それに比べると第2世代の選手はあまりポジションにこだわりが無いと言うか、良い意味でも悪い意味でも”素材”であり、海外で与えられた役割に応じてスキルを新しく身に付け、成長した選手が多いです。

そして第2と第3の違いは戦術理解度でしょう。第2世代は、トルシエアレルギーに端を発した過度な日本サッカーの自由ゆとり指向のために、若年世代でまともな守備戦術の教育を受けておらず、内田を除けば欧州に渡っても守備のポジショニング、1対1の守備対応で軒並み苦労しています。しかし第3世代の選手は、宇佐美は例外でしたがゾーン・ディフェンスをベースにするチームが多い欧州クラブの戦術にすぐ馴染んでおり、1対1はまだ弱いもののハードワークも厭いません。

そう考えると、本田は年齢的には第2世代ではありますが、考え方としては第1世代に近い思想であり、その当時よりもさらにポジションレスの考え方が広まっている欧州では時代遅れになりつつあるのではないかと危惧しています。実際に、ミランの攻撃を作っているのはトップ下の本田ではなくてインサイドハーフのボナヴェントゥーラやモントリーヴォであり、この傾向は誰が監督になっても変わらないと思います。

本田がこれから復活する鍵は、まずは自分が持っているトップ下や得点へのこだわりを捨て、守備でも高い貢献をする意識を持つことが出来るかどうかにかかっているのではないでしょうか。

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