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「案外、Jリーグの戦術も捨てたものじゃないなと思った」J1 2ndステージ第7節 サンフレッチェ広島-柏レイソル

先週に開幕したブンデスリーガの、ドルトムントやシュツットガルトの試合を見て、ドイツではこんなにも先端的な戦術を駆使しているチームが続々と出て来ているのに、日本では相変わらずまともにゾーン・ディフェンスさえ出来ないチームばかりで、このままでは個人レベルはおろか戦術までも、世界やアジアから遠く置いて行かれるのではないかと危機感を感じてしまった。

ところがたまたま昨晩この試合を見て、ようやく日本でも”戦術で勝てる”チームが出て来たのかもしれないと思って、少し胸を撫で下ろす気持ちになった。それはもちろん、3-0で勝った柏レイソルの方である。

今年の柏は、吉田達磨監督が4-1-4-1の戦術を採用してシーズンに臨んだものの、攻撃は良いが守備組織がメタメタで、ACLではグループリーグを勝ち抜くもののリーグ戦では出入りの激しい結果で14位に低迷してしまった。ところが、2ndステージでは第5節の湘南戦にこそ運動量で負けて完敗を喫したものの、ここまで6戦4勝と安定した戦いぶりになっている。

そのヒントとしてこのサンフレッチェ広島戦で見えたのは、今までのポゼッション指向の攻撃から堅守速攻型への戦術的な柏の変化である。

攻撃のビルドアップ時にはSBが高く上がってアンカーが下がり気味になり、「W」の形にボールを動かす最近のトレンドに乗った形であるのは変わらないが、1トップに工藤ではなくて武富を置き、彼を囮にしてDFラインを引きつけ、SHやインサイドハーフがバイタルエリアのスペースに入ってボールを受け、そこから工藤やクリスティアーノの裏への飛び出しに素早くパスを合わせるという、あそこまで極端ではないがシュツットガルトに近い速攻の形に絞って来た。

そして守備では、広島がボールを持つとDFラインの位置にまで茨田が下がり、柏のフォーメーションは完全に5-4-1という形になっていた。今までであればアンカーの茨田の脇に出来たスペースを使われる事が多かったのだが、これにより中盤との間がコンパクトになってバイタルが圧縮され、佐藤寿人の飛び出しにDFがアプローチする時間が短縮でき、前線で基点が作れなくなった広島はすっかり攻撃が手詰まりになってしまった。

それでも、5バックのサイドの前からアーリークロスを上げてラインとGKの間を狙うという、ゾーン・ディフェンスが苦手とする攻撃で広島は対策してきたのだが、それも柏のほうがSBが早めに前に動いてマークに付く動きを見せた事ですぐに封じられてしまった。

広島は後半にミキッチを投入してサイドを活性化させたものの時既に遅し。この試合からようやく塩谷が復帰したのだが、1点目と3点目は対面のクリスティアーノのマークを外してしまって失点に絡むなど、試合感の欠如が大きく響いてしまった。これで鹿島戦に続いて2試合連続で無得点負け。2ndステージでも年間総合でも首位から陥落。夏場に状態が落ちるのはいつものパターンだが、早い立て直しが望まれる。

まさに今までは「攻め達磨」だった柏が、ポゼッションだけではなくて守れるサッカーが出来るようになった効果は極めて大きい。選手が動いてトライアングルを作ることが前提のポゼッションサッカーにとっては難しくなる夏場から、連戦の疲れが出る秋にかけて有効であるだけでなく、これから待ち構えるACL準々決勝にとっても大きな武器になるはずだ。

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