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「トルシエ時代を思わせる懐かしさ、と喜んでいるわけにはいかない」東アジアカップ2015男子 日本-中国

ここまで1分け1敗と未勝利の日本は、最終戦で開催国の中国と対戦。日本は前半の10分に、PA付近でパスを回されて最後はマークがずれたところを蹴りこまれて失点するものの、43分に槙野のスルーパスからオーバーラップした米倉の折り返しを武藤が合わせて同点に追いつき、後半もボールを保持して攻め立てるものの得点ならず、最後は息切れしての引き分けに終わってしまい、今大会を最下位という成績で終えた。

当然ながら、日本代表の出来には不満が残る結果であり、選手をクラブで慣れているポジションで使わなかったり、度々日程面で不満を述べるハリルホジッチ監督には批判が集まっている。が、実はハリルホジッチは今大会についてはしっかりした準備が出来ないのを見越して、あくまでJリーグの選手に対するセレクションの機会として割り切っていたのではないかと思うのだ。

選手をベストと思われるポジションで使わない事も、あえてそういう形で起用する事でポテンシャルを図るという効果もあるし、Jリーグでプレイしているだけでは分からない自分の足りない部分に気づく事も出来る。川又なんかはボールをキープできない、ポストからの返しが相手に渡ったり、遠いDFまで戻してしまったりと1トップとしては散々な出来で、宇佐美もサイドで上下しているうちに試合から消えてしまうなど、そうなるのが分かっているのに最後まで起用法を変えなかった。

3戦フル出場を果たした山口も、ゾーン・ディフェンスのボランチとして起用するにはあまりに人へ食い付きすぎて、案の定この試合でも失点場面で自分の持ち場を放棄してボールへアタックに行ってしまい、そのスペースにパスを通されてフリーでシュートを打たれてしまった。はっきり言って韓国戦のゴールを帳消しにするボーンヘッドであり、ハリルホジッチの雷が試合後に落とされる事は間違いない。それでも、永井もそうだが彼のポテンシャルを考えれば見捨てるよりも気づかせる事が重要という事だろう。

ただそれも悪い面ばかりではなく、武藤はトップ下でワンタッチゴーラーとしての嗅覚を発揮できたし、遠藤はボランチとしても右サイドとしてもA代表レベルに迫っている事を証明、米倉は両サイドでも使える目処がついた。スタメンは当分海外組がメインかもしれないが、ポリバレント性があれば今後も代表に呼ばれる率は高くなる。

ぶっちゃけ、現在の日本選手で本来のポジションで使われないと力を出せないと文句を言って良いのは岡崎と内田ぐらいで、香川や本田でさえも世界レベルではトップ下として微妙、吉田や長谷部はしばしばSBに回されるし、長友、両酒井はずっと守備力でダメ出しをされ続けている。Jリーグ組がアジア相手にポジションでどうこう言うのは10年早い。

まあ、ハリルホジッチも内心ではあくまでテスト考えていたとしても、やはり相当な負けず嫌いなのであくまでテストだとは言い張らず、コンディションや日程、戦術練習が取れなかった事につい愚痴が出てしまうのだろう。そういう、チームの強化にとって邪魔な障害は全て排除したい、そのためなら敵を作ることもいとわないという性格は本当にトルシエそっくりだと思う。日本では言い訳がましいのは嫌われるけど、自分の主張はとことん通して意地でも不利を逃れるところはいかにもフランス人らしいなと(苦笑)。

ザック、アギーレと比較的大人な監督が続いたので、こういうタイプの監督に免疫が無いファンやマスコミは多いと思うが、またトルシエ時代のようなバッシング報道になってしまうのだろうか。当時は川淵会長が率先してトルシエ否定に走ってしまい、それが日本にとっては守備戦術軽視、オートマティズム否定の失われた10年に繋がってしまったのだから笑えない。

大仁会長は今回の結果について謝罪をしたようだが、そもそもテストであれば謝罪なんかをする必要は無いわけで、その点が本当に分かってないのか、ファンやスポンサー向けのポーズなのか非常に中途半端な態度であり、到底ハリルホジッチを積極的に信頼、サポートしているようには思えない。今大会について選手と監督の意思疎通が出来てないのではという指摘をする記事もあったが、それ以上に監督と協会との間で信頼関係が構築できているのかが心配である。

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