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「単なる脳筋では無かった森山監督の変幻自在」インターナショナルドリームカップ2015 日本-フランス

日本で開催されるU-16世代の国際カップ戦「インターナショナルドリームカップ」は、日本が初戦のコスタリカ戦で大勝すると、次のチリ戦、そして最終戦のフランスにも勝利し、見事に第1回大会を優勝で終えた。

フランスとの試合は、さすがに格上だけあって内容は非常に苦戦した。日本はフィジカルもリーチもあるフランスのプレッシャーに慌ててしまい、ボールをキープし切れず逃げのパスをしたらどんどん追い込まれてバックパスの連続になって最後はGKがクリアするか、無理やりスルーパスを出そうとしてもあっさり体に当てられてしまうかで全く攻撃が組み立てられない。

そこまではいつもの日本ユースのパターンなのだが、森山監督の違うところは守備の引き出しの多さ。コスタリカ戦ではかなり早い段階からマンマークへ移行する守備で、失礼ながら脳筋、マッチョ志向のサッカーをする人なのかなと思ったのだが、フランス戦はやや粗雑ながらも正統派な4-4-2のゾーン・ディフェンスをやって来た。

それでも前半はフランスのキープ力に苦しみ、日本選手はフランスの選手にパスが渡った後に間合いを詰めて、そこからアタックに行こうとするためにフィジカルで跳ね返されてボールを奪うところまで行けない。しかし日本はゾーン・ディフェンスのおかげで最後の場面で何とかボールを絡め取り、選手個々も1度のアタックでは諦めず何度もしつこくボールに食い下がってフランスに波状攻撃を許さない。

とは言え最後の方はさすがに息切れして何度かフランスに決定的な場面を作られ、このままではジリ貧だなと思っていたのだが、日本は後半からまた違う顔を見せて来た。

前半はSBとSHが相手の圧力に下がってしまっていたのだが、メンタル負けしていた品田に代えて中島を入れ、日本はマイボール時にサイドの選手を上げてフランスの基点を押し下げ、そのサイドが前残りする事でボールを奪った後のパスコースを増やすプランに出た。するとこの策がズバリと当たり、6分に西山からダイレクトの縦パスを受けた中島が中央をドリブル、味方が相手の守備を引き連れで出来た穴を利用してコースにミドルシュートをねじ込んだ。

運も日本の味方し、19分にはセットプレイからクリアし切れずゴール前にこぼれたボールを中村が押し込んで日本は2点目をゲット。そこからフランスも猛反撃に出て、26分にはハンドでPKを与えて1点差に迫られるものの、ロスタイムにカウンターからの西山のスルーパスに齋藤が抜け出し鮮やかな3点目を決めて試合終了。

後半に日本がフランスを突き放せた理由は、守備のポジショニングもそうだが個人の守り方も変わった事が大きい。前半はまずパスコースを切ってからアタックに行っていたのを、相手がボールをトラップする瞬間、そこに間に合わなければトラップからボールを前に置くタイミングを狙ってアタックするようになり、フィジカルが強い相手が不安定になる瞬間を狙う意識が徹底されていた。

森山監督といえば、とにかくハードワークを全面に押し出す人という印象が大きいが、個人でも組織でもいろんな守備の引き出しを備えている監督だなと感銘を受けた。彼が、U-16のみならず幅広く日本のユース世代に大きな影響を与えてくれる事を切に願う次第である。

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