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「この引き出しがディフェンディング・チャンピオンの余裕か」女子ワールドカップ2015 準々決勝 日本-オーストラリア

アメリカ、スウェーデンという強豪が揃ったグループを勝ち上がり、ベスト16では強豪のブラジルを破って波に乗っているオーストラリアとの準々決勝。しかし日本は日程的な不利を物ともせず試合を優位に運び、終盤にCKからのこぼれ球を岩渕が押しこむ決勝点を挙げて準決勝へと駒を進めた。

日本が終始試合をコントロール出来た理由は、まずオーストラリアに対する入念なスカウティングと、それに対するゲームプランを選手がしっかり遂行できていた点にある。

オーストラリアのフォーメーションは4-3-3で、ブラジル戦に先発したヘイマンではなくスピードのあるサイモンを1トップに起用し、日本のDFラインの裏を突く狙いで来たが、オランダ戦では高い位置取りをしていた鮫島と有吉はウイングのデ・バンナ、ケールの縦を切って対応、大儀見の動き出しでCBを引き付けバイタルにスペースを作りつつ、オーストラリアの1ボランチ脇のスペースを大野、宮間、川澄が使って中盤の主導権をしっかり握った。

それに対してオーストラリアも対策を施し、前半の25分以降はゲームメイクの中心だった宇津木と阪口にインサイドハーフがマークに付くようになり、そこまで順調だった日本のパスワークがギクシャクし始める。が、そうなると今度は鮫島と有吉が高い位置に上がってパスの受け手となり、オーストラリアにペースを握らせない。

まあその分、SBの裏のスペースを使われてカウンターを受ける場面も増えてしまうのだが、そこはCBとボランチがしっかりカバーし、鮫島と有吉のオーバーラップへの対応とカウンター攻撃でオーストラリアのウイングを疲弊させた事が後半に活きたとも言える。

後半の開始直後は、この試合で初めてオーストラリアが積極的に前からのプレスを仕掛け、日本を自陣に張り付かせるラッシュをかけてきたが、そこも日本はワンタッチパスを多用して相手のプレスを上手く交わして対応する。

そして後半20分を過ぎると、中5日と日程的に有利なはずだったオーストラリアのほうが先に足が止まってしまって日本が完全に中盤を支配、もはや日本のサイドでのコンビネーションにオーストラリアはついて行けず防戦一方。

しかし日本も前半にあった大野の2度の決定機に決められず、後半も宮間のヒールシュートや大儀見の浮かしたシュートといったビッグチャンスもダメで、嫌なムードになってもおかしくなかったのだが、やはり男子とは違って1度は世界王者に立った経験なのか全く慌てること無く淡々と試合を運び、しっかり後半42分の決勝点を物にした。

オーストラリアは後半33分に高さのあるヘイマンを投入、日本が苦手とするパワープレイ狙いで来たのだが、そこまで日本の活発な動きに疲弊していた中盤にミスが目立ち、シュートも精度を欠いて日本を追い詰める事が出来なかった。

「自分たちのサッカー」とかいう一人よがりなプレイに陥らず、チームとしての狙いを全員が忠実に遂行し、相手の出方によって戦い方を臨機応変に変えられる引き出しの多さ、懐の深さという点で、勢いに乗っていたオーストラリアをいなして最後にはきっちり寄り切る、まさに横綱相撲といった風格を感じさせる試合であった。

次の相手はカナダになるかイングランドになるかはまだ試合中で不明だが(イングランドに決定)、こういうサッカーが次も出来れば決勝進出は問題がないように思う。確かに、ドイツやフランス、アメリカといった世界ベスト3が反対の島に行った幸運はあるが、運を味方にするのも世界大会で結果を出すには必要な要素。このまま最後まで波に乗ってしまいたいね。

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