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ハリルホジッチがシンガポール戦後に病院を訪れたら

「コンコン」

はい、次の患者さんどうぞ~。

 

お、えらく背の高い外人さんで。え~と、お名前は・・・ヴァ、ヴァイッド、ハリホレジッチさん? 違う、ハリルホジッチ? ああ、これはどうもすいません。

それにしても珍しいお名前ですね。どこの国のご出身で? あの内戦があったボスニア・ヘルツェゴビナですか、これは大変な苦労をされた事でしょう。

 

さてお見かけしたところ、どうも顔色が良くないようですが、今日はどうしましたか?

なになに、自分の教え子が、練習では貴方の言った事を忠実に実行してくれるのに、いざ試合となると動きが硬くなって、てんでバラバラなプレイをしてしまうと。

そしてちゃんと試合に向けてスタミナを付ける練習をして来たのに、90分持たずに足が止まって走り負けるわけですか。ふむふむ。

相手は4-1-4-1でこちらが4-2-3-1、3の両サイドがワイドに張って、ボランチがって・・・あ~そこまで、貴方の戦術論は結構です。今からカルテを300ページも書きたくないので。

 

しかしなるほどね~、もしかすると、貴方は来日してあまり時間が経ってないのではないですか?

これはね、日本人に特有の病気で「アジア病」って言うんですよ。中東の国でも時々見られるのですが、アフリカやヨーロッパ、南米ではほとんど見ないですね。

 

貴方のお国では、きっとしっかり準備してモチベーションを上げたら、試合では120%の能力を選手が出すのだと思いますが、日本人は得てして万全な準備をするほどオーバーヒートするんですよね。

口では冷静にと言いながら頭は沸騰状態になっていて、視野が狭くなって体がこわばり、ミスを恐れて近くへ近くへと安全なプレイを選んでしまう。その癖、パスが来ないのに動き出しは必要以上にやってしまって、結果的に無駄な体力をどんどん使ってしまう。

体力が落ちるとミスが増え、さらに思考が悪い方に流れてしまい、練習した戦術や連携の事などすっぱり頭から消えてしまって、その場で自分の思いつきだけでプレイするから、周りが全く同調できない。

早めに点が入ると落ち着くんですが、点が決まらないとどんどん頭に血がのぼり、まだ試合時間が20分も残っていても、まるでロスタイムのように焦って強引なプレイが増えて行く。でも頭も疲れて集中力が落ちてるので余計にチャンスを潰してしまう。

サッカーなんて、ボールを奪い合いする中でチャンスを見つけ出すスポーツなのに、ボールを失う事がまるで世界の終わりかのように恐れて縮こまり、攻撃のためではなくて点を取られないようにポゼッションをしているように感じられる。

 

え? まるでその場に居たかのように症状を当ててるって? そりゃそうでしょう、今までうちの病院にいらした、ジーコさん、ザッケローニさん、アギーレさん、皆さん判で押したように同じ病状でしたからね。今やそらで言えてしまいますよ(笑)。

 

でもね、大変残念なんですけど、この病気は日本人のDNAに組み込まれてしまっていて、発症を抑えるのは極めて難しいんですよね。新人でもベテランでも関係無くかかってしまいますし、試合で先制点を取られたらほぼ100%発症します。そして1人でも患者が出ればチーム内に蔓延するのは時間の問題なのです。

 

そうそう、確かトルシエさんとオシムさんは軽症で済んだはずですよ。オシムさんの療法は良い臨床例になるかと思ったのですが、ご本人が別の病気で倒れてしまわれたのが本当に残念でした。

トルシエさんは若手だけを徹底的にスパルタで鍛えて組織免疫力を高め、オシムさんはアジアカップですら単なるステップにしてプレッシャーによる発症を遅らせていましたが、貴方の場合はまだ日本人の特徴が分かってないでしょうし、アジア病のウイルスも変異して以前よりレベルアップしてますので、そういう変化球は難しいでしょうねえ・・・

 

一応、アジア病には特効薬があるんですよ。でもね、これはたいてい依存症になってしまうし、対症療法なのでチームの体力自体を底上げする事は出来ず、あまりお勧めは出来ないんですけどね。

ジーコさんの場合は、レフティマッシュルームとボンバーヘッドという薬を処方しました。確かに効果は絶大だったんですけど、もともとの生活がキャバクラ通いをするなど根本的に自堕落で治療は医者に丸投げ、それでも下手に薬が効いてアジアカップを取っちゃったんで失敗が予見できていた本番まで延命しちゃいましたからねえ。

ザックさんには、ガチャピンという遅効性の薬が良く効きました。でも依存性が強すぎて、どんなに体調が悪くても薬を切らせませんでしたし、副作用で「自分たちのサッカー」とか言い出す自尊心が肥大した中二病を招くという悲惨な結果になってしまいました。

 

5年前に、今治大学の岡田教授が、予選でレフティマッシュルームを効果的に使いながら、副作用で免疫力が落ちるのを見越して本番で服用を止め、ボンバーヘッドとブラジルチョンマーゲのツインワクチンを使って免疫を飛躍的にアップさせるという臨床例を発表しましたが、日本人に限ってはその後に激しいアレルギーが起きてしまって、今では黒歴史扱いになっています。

どうも日本人は組織的とか守備的とかの治療法に対してはアレルギーが出やすいんですよね・・・トルシエさんの時は、当時の医師会会長だった川淵さんが一番激しいアレルギーになってマスコミが大騒ぎになりましたし。本来、体質的には合っているはずなのですが、何か幼少時代のトラウマでもあるんでしょうか。そしてその反動で、創造性とか自由とかをうたうホメオパシー的治療法にすぐ引っかかって体調を崩してしまう。

 

まあ、まだ貴方の場合は十分精力がありますし、基礎体力がしっかりしてらっしゃるので特効薬の処方は必要ないと思います。症状からするとガチャピンが効きそうですが、もう安定性が薄れた上に在庫は少ないですし、最悪の場合に取っておいたほうが良いでしょう。

 

え~と、今現在貴方が服用しておられる薬ですが、ダビドソンとウドンイエローというのが気になりますね。これらは中二病の副作用がありますし、チーム戦術を阻害する成分が入っているので劇薬に分類されます。一時的に、使用を控えられたほうが良いかと思いますね。

あと最近服用を始められたレッドガクチャンという薬。これはガチャピンのジェネリックとして処方されたと思うんですが、意外と即効性で薬効の範囲が狭く、ガチャピンの代わりにならないという報告が出ています。すぐに服用を止める必要は無いですが、体に順応する時間がかかりそうです。

 

ひとまず、9月までは和漢方中心の服用でしっかり体力を付けてもらって、海外製の薬がいつでも効くという先入観をクリアする事ですね。その上でまだ病状が回復しないようでしたら、またいらしてください。お大事に~!

 

 

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