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「なでしこにとっての澤は、ガンバにとっての今野のような存在」女子ワールドカップ2015 グループC 日本-スイス

この試合は当然ながら普通の勤め人にとっては勤務時間の真っ只中で、ネット上の感想は相当ボロクソに書かれていて悲観的な先入観があったのだが、いざ試合を見始めていると言われるほど悪い試合じゃないよなと思ってしまった。

相手のスイスは欧州予選で9勝1分け、53得点1失点と圧倒的な成績を残していたチームだけに、その難しい相手を無失点で抑えて勝利したのは素直になでしこジャパンの健闘を喜ぶべきである。とは言え、試合の流れについてはスイスの経験不足、サッカー強国と呼ばれるチームには必ず備わっている相手の弱みにつけ込んで結果をもぎ取る能力に欠けていたのは事実だろう。

特に前半のスイスは初戦の緊張感もあったのか出足が鈍く、日本は宇津木と有吉のSBが好調でサイドでの主導権を握り、大儀見と安藤がDFラインの裏を交互に突いてスイスの守備にギャップを作り出し、それで出来たバイタルエリアのスペースを使う流れが出来ており、26分のPKもバイタルに引いた大儀見から安藤の飛び出しという形で得られたものであった。

そして守備ではなでしこジャパンに復帰した大ベテラン澤が、攻撃ではあまり良いところは見せられなかったものの、幅広くピッチ上を走り回ってスイスの攻撃の起点を着実に潰していた。澤はかなり自由に動いていて、日本が採っているゾーン・ディフェンスの組織に則った動きは決してやってないんだけど、その高い危険察知能力で事前にゾーン・ディフェンスに対する脅威を取り除いているという点では、ガンバにおける今野の貢献度に良く似ているように思う。

実際、後半12分に澤が退いてからは一気に日本は苦境に立たされた。代わりに入った川村もそれほど1対1が弱い選手ではないんだけど、結局ゾーンの範囲に留まった中での働きなので、相手のSBが高い位置を取って日本はSHが下がって6バック化したような状態では、いかにそこで個人が頑張ったところで戦況は大きく変えられない。そして安藤の怪我で入った菅沢もシュートの場面以外では目立たず、前線で基点になれずスイスに波状攻撃を食らってしまった。

それでも佐々木監督は4-4-2に固執して中盤を厚くはしないし、ボールが止まる深い人工芝のピッチでもしっかりパスを出せていて、アルガルベカップでも日本選手の中では随一の活躍を見せていた宇津木をSBとして使い、決して好調とはいえない阪口をボランチで優先起用するし、どう見ても過去の成功体験に囚われすぎて、相手と自分たちを比較して適切な采配を行えていないのではという疑念が拭えない。後半はあくまでバッハマンの決定力に助けられたのだと、選手はともかく監督には猛省を促したい。

あと明るい材料としては、GKの山根の活躍。1度キャッチミスで危ないシーンは作ってしまったが、それ以外は安定したセーブを見せていたし、何しろ男子のGKでもなかなか見かけない187㎝の身長はハイボールやセットプレイの攻防で俄然有利である。澤と並んで、今大会の日本のキーパーソンとなる選手ではないだろうか。

さて次は第2戦のカメルーン戦。初戦はエクアドルに6-0で大勝、得失点差で現在首位に立っている。当然スイスよりも力が落ちる相手ではあるが、身体能力はやはり高いので出来るだけゴールに近づけたくはないところ。しっかりDFラインが押し上げて、ポゼッションを確保して早めに勝負を付けてしまいたい。

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