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「選手を個人能力じゃなくて戦術適応度で選ぶ時代が日本にも来るのか」ナビスコカップ グループB モンテディオ山形-横浜Fマリノス

今年度のナビスコカップのグループリーグ最終節。グループBは名古屋の勝ち抜けが既に決定しており、その次には勝ち点8で3チームが並び、山形は2位の神戸に対して得失点差が-1で、この試合の結果いかんでは十分勝ち抜けの可能性があったのだが、消化試合で若手を起用してきた横浜Fマリノスにまさかの零封で敗退が決定してしまった。

内容的には、序盤から山形が押していた時間に先制点が取れず、前半15分に先制点を奪われた後もゴールポストにシュートが当たる場面など何度かあったチャンスも物にできず、前半終了間際に自陣でのミスから2点目。後半から山形はディエゴを投入して逆転を狙うも、きっちり自陣でリトリートする横浜を最後まで崩しきれなかった格好となった。

今期は今まで2度ほど横浜Fマリノスの試合を見たのだが、どうもゾーン・ディフェンスの浸透度がイマイチで、特に中村俊輔が入ると一気にポジションチェンジが増えていわゆる「俺達のサッカー」化が進んでしまう印象があったのだが、この試合はドリブルで中央に突っかけられたりすると無駄に人が集まってゾーンが怪しくなる場面はあったが、総じてバランスの良い守り方が出来ていた事が、山形の反撃を封じる要因になったように思う。

そのゾーン・ディフェンスのやり方も、4バックがあまりスライドせずに中央に絞り、相手のサイドが高い位置でボールを受けた場合は、SBが対応するのではなくSHが後ろまで下がって見る形になっていて、昨日見たセリエAのインテルの4-3-1-2ような対応になっていたのが興味深い。SBとSH、ボランチが連動して相手のボールの位置によってポジションをスライドするディアゴナーレはかなりの組織習熟度が要求され、それでマゴマゴするよりも割り切ってシンプルに守る方が良いというのが世界の流れなのかもしれない。

そしてこの試合では、ゾーン・ディフェンスの効果はどちらかと言うと守備よりも攻撃で発揮されていた。”ゾーン・オフェンス”の基本は、マイボールになった時にはオートマティックに2-4-4のような形で各選手がワイドなポジションを取る事にあり、それによりボールホルダーはいちいち選手の位置を確認しなくても、サイドチェンジでスペースへとボールを出せばそこに味方がいるので、いちいちルックアップしてボールを持ち替えて、などとスピードを落とすこと無く攻撃が展開出来る。

横浜の先制点も、比嘉がいち早くスペースに入り込んでオープンに展開されたパスを折り返し、それを中に入ったラフィーニャが上手くコースに流し込んだもので、そういったゾーン・ディフェンスの利点を活かした速い展開がこの日の横浜には随所に見ることが出来た。欲を言えば、守備時にファーサイドのSHが高い位置を取ってサイドチェンジからカウンターの威力を増したいところだが・・・

これからはJリーグもトルシエのように、もともと若くて戦術に対する吸収度が高く、ユース時代にある程度ゾーン・ディフェンスの訓練を受けている若手のほうが、経験のあるが変な癖が染み付いたベテランを使うよりも良いと思う監督が出て来るかもしれない、そんな妄想を感じてしまう一戦だった。

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