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「4-3-1-2のフォーメーションが、長友をインテルの戦力外から救う?」イタリア・セリエA第38節 インテル-エンポリ

マッツァーリ監督の解任後、三顧の礼で招聘したマンチーニ体制になって一時的には調子が上がったインテルだったが、その後は例年通りの失速を見せて気がつけばヨーロッパリーグの出場枠からも脱落、ミラノ勢が揃って欧州戦の座席を失うという失意の結果になってしまった。

そんな中でインテルにとって唯一明るいニュースになったのは、FWイカルディの得点王獲得。この最終戦で見事2ゴールを獲得し、トップのルカ・トーニに追いついた。

当然、そういう試合なので個人的には先発フル出場した長友のプレイと、マンチーニ監督からは戦力外視されているという噂が、本当のところはどうなのかという部分に注目してみた。

インテルもエンポリも使ったフォーメーションは、最近イタリアで流行中の4-3-1-2。ここでも何度か書いている通り、このフォーメーションの特徴は攻撃的・守備的サッカーを大きな戦術的変更を行わなくても使い分けられるという点なのだが、この試合はどちらも失うものが無かったし、インテルはイカルディの得点王という目的があったので、どちらも終始攻撃モードでの戦いになっていた。

攻撃モード4-3-1-2の場合は、守備時も前線の3人はあまり守備には戻らず、後ろの4-3で守備のゾーンを作るわけだが、当然ながらゾーン・ディフェンスの基本である4-4セットに比べると脆弱になる。

それをカバーするために、中盤の3人がボールサイドにスライドしてファーサイドのSBが上がって3-4の形で中盤がプレスをかけたりすえわけだが、もう1つの特徴としては、DFラインの4人が3ほとんど3バックの幅にまで絞って守るという点がある。

当然、SBも内側に絞るのでクロスを上げられやすい欠点はあるのだが、イタリア的には下手にクロスを警戒してDBが抜かれてCBがカバーに出たりするよりも、クロスが来ても中で跳ね返せばOKという割り切りがあるのかもしれない。

エンポリ戦でのもう1つの発見は、この戦術は長友にとってもやりやすそうに見える点である。通常のゾーン・ディフェンスの場合、CBがスライドするとSBがCBとしての役割を果たさないといけないために、どうしても高さに欠ける長友のような選手は狙われやすくなる。しかしこの4-3-1-2は基本的にスライドしないので、さほど大きな欠点にならない。

試合後半にはいつもの長友タイムが始まり、味方がボールを持つとマシンのように長友が必ずオーバーラップで高い位置に駆け上がっていた。そうなると、いくら4-3-1-2がサイドを捨てていると言っても完全な無視は出来ないわけで、長友の上がりに意識が行く分、中央でのマークが甘くなって、エンポリのDFラインが何度もパラシオやイカルディに裏を取られてしまっていた。

この試合のように、共にフォーメーションが4-3-1-2だった場合、互いにサイドの守備を捨てている分、運動量でサイドの数的優位を作れるほうが圧倒的に有利となる。イカルディが得点王を取れたのも、ある意味長友のおかげと言えるかもしれない。

戦術面だけではなく、長友個人のプレイも最終節にして完全復活し、正確なフィードやサイドチェンジを飛ばしたり、クロスの精度も確かでミドルシュートは枠に飛びと、前半戦の不調はいったい何だったんだというぐらいにキレキレだった。これなら、どんなクラブであっても戦力外にする監督はいないだろう。

まあ、前半戦から怪我、そして復帰後のプレイを見ていると、本当に長友のピークは終わってしまったのかもしれないと心配していただけに、香川と同様にシーズン最後になったけど無事復活して安心した。今シーズンの鬱憤を二次予選で思いっきり晴らして欲しいね。

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