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「GKとの1対1を外した事に、原口の成長を見た」ドイツ・ブンデスリーガ第27節 ヘルタ・ベルリン-パダーボーン

後半42分に原口がカウンターからDFラインをフリーで抜け出したものの、GKとの1対1でシュートをダフって外してしまったのに対し、トップ下のシュトッカーや途中出場のシュルツが得点したために、また原口はスタメンから外れてしまうのではないかと心配する反応が多かったようだが、個人的には逆にそのシュートミスにこそ原口の成長した証が見えていたように思う。

前節のHSV戦で後半から出場した時には、それまでの自分の判断で適当にフラフラ動いていたように見えるポジショニングとは違って、チームが採用しているゾーン・ディフェンスに則った動きが出来ているなと思ったのだが、いつの間に原口はドイツ語をマスターしたのかと思うぐらい、この試合ではその確信がさらに高まった。

まずボールが自分と逆サイドのある場合はきっちりと中に絞ってスペースをカバーし、相手のSBが上がって来たらすぐ捕まえられる位置にまで下がったポジションを取り、そこからのオーバーラップにはきちんとマークで付いて行き、味方のボランチやSBと連携してサンドイッチする。単にカバーするだけでなく1対1で競り合ってボールを奪った場面もあり、こういった忠実な動きをしてくれると監督としては本当に安心して見ていられるはずだ。

パダーボーンのフォーメーションが4-1-4-1で、リードされる前はSBがほとんど上がらずにサイドの深いスペースを埋めていたので、原口がサイドにいる時はなかなか良いボールが入って来なかったが、それでも守備から攻撃に切り替わった時には労を厭わず走っていた。例えそれが無駄走りになったとしても、ゾーン・ディフェンスの観点からすると相手の守備陣を下げてプレスの効果を弱めつつ、味方のマークを減らしてパスコースを増やす効果があり、これも監督にとっては助かる働きである。

シュートを外した場面も、後半42分になっても攻守の切り換えを怠らなかった原口の姿勢が産んだチャンスでも有るし、そのミスもそこまで何度も走っていた疲労による部分が大きかったのだろう。そこは間違いなく彼の課題ではあるが、ハリルホジッチ監督ならきっとそのトライには拍手をするに違いない。ドイツ中を見ても、原口のようなスタミナとスピードがあるドリブラーの存在は貴重であり、チームでの存在感はかえってそのミスで増したのでないかと思う。

対するパダーボーンは4-1-4-1でよく守っていたが攻撃のタレント不足は深刻で、シーズン序盤はプレスからのショートカウンターでスタートダッシュを決めたが、ロングボールやサイドチェンジでラインを下げさせ、中盤のプレスを弱めてアンカーの両脇に出来るスペースを使う対策を各チームから取られてからは非常に苦しんでいる。

この試合でも、後半になってパダーボーンがサイドを高く上げてサイドチェンジで基点を作ってペースを握ったように見えたが、その分SBの位置が上がってヘルタに攻撃のスペースが出来てしまった事が失点につながった。ヘルタとは違って残留への糸口が見えない状態は続きそうである。

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