サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「まさか北陸の地にハリルホジッチ・サッカーが実現していたとは」J2第5節 ツエーゲン金沢-愛媛FC

常々、日本の場合はJ1よりもJ2のほうが組織的なサッカーをするチームが多いと個人的には思っている。

昨日のTwitterでもつぶやいたのだが、日本では「テクニックがある奴」>「フィジカルや運動量に長けている奴」という順列が出来上がっていて、マスコミやファンは華のあるテクニシャンが繰り広げるパスサッカーを好むし、パスサッカーの場合は下手な選手は走って体を張らないと上手い選手からボールをもらえないので、自動的に従属関係が出来上がってしまう。その典型例が、ザックジャパンにおける豊田やハーフナー・マイクの扱われ方や、ギリギリ走って届く場所にあえてミスパスを出して分からせる中田のメッセージパスだったりする。

これが逆に、プレミアリーグのようなキックアンドラッシュを多用するサッカーの場合は、中田や稲本、香川のようなテクニシャンがフラフラ紛れ込んでも邪魔だとばかりに頭上をボールが飛び交って全くボールが来なくなってしまうのだから面白い(笑)。

J1の場合、そういうエースで4番的な「上手い」王様選手が集まりやすいのと、見る方もエンターテイメント性を期待してしまうので、やはり戦術よりも個人能力をベースにしたサッカーが多くなってしまうのだろう。逆にJ2は下手な選手が多いので、どのみち華麗なパスサッカーは望めないし、柿谷がそうだったが上手い選手が入ってパスを出そうと思っても、まずその選手が走らないとボールをもらえないという状態になってしまう。そして昇格も降格もあるので、チームは見てくれよりも結果を第一にせざるを得ない。それがJ2が戦術的である理由ではないだろうか。

と思いつつ、何となく試合を見始めて驚いたのが、ツエーゲン金沢がやっているサッカー。守備が4-4-2のゾーン・ディフェンスである事には今更驚きはしないんだけど、ボールを奪ったら即座に攻撃へと切り換え、ジャーンがスペースへと動いてポストでつなぎ、中盤が即座にフォローしてサイドへ展開、清原らサイドプレイヤーが高い位置で基点になって、サイドで数的優位を作って崩すという、まさにハリルホジッチ監督が目指すようなコレクティブな攻撃を見せていたのだ。

特に金沢の2点目の場面が印象的で、3バックの愛媛がDFラインに5人を並べて固く守っているところへ、金沢はその愛媛のDF5人全てに選手が1対1で付き、その1人が中盤に降りてきて縦パスをフリック、それを中でつないだところに右サイドから清原がダイアゴナルに走りこんでパスを受けてゴールと、前線の選手がワイドかつ均等に並び、誰かが動いたスペースを他の選手が次々に利用して速いタッチで攻め切るという、まさにゾーン・ディフェンスのスカルトゥーラ&ディアゴナーレの攻撃版と言える見事な形だった。

前半の愛媛は金沢のゾーン・ディフェンスに手を焼き、ビルドアップでボランチまでボール来たところを即座にプレスで狙われて全く攻撃が出来なかったのだが、後半10分に3点目を奪われたところで開き直ったのか、長身FWの渡辺亮太を投入して徹底的にロングボールで攻めて来るようになった。組織的には高い完成度を誇る金沢だったが、ハイボールが来るとゾーンではなくて2対1で守ろうという意識が強くなり、中盤の選手がDFラインに吸収されてセカンドボールを拾われる展開が続いたが、何とか失点を1に抑えて逃げ切り。

ツエーゲン金沢が現在の4位という順位がフロックでない完成度を見せているのは確かだが、運動量が落ちる夏場にどれだけ持ち堪えられるのかと、愛媛の後半のように相手がパスサッカーじゃなくて個人で押してくるサッカーをやって来た時の対策が、今後のポイントになって来るのではないだろうか。

モバイルバージョンを終了