旧閑ガゼッタ

「完成以前の組織は、下手に組織が無いより難しい」J1第3節 横浜Fマリノス-サガン鳥栖

資本提携したマンチェスター・シティのルートから鳴り物入りでモンバエルツ新監督を招聘したものの、開幕から公式戦3試合で勝利がなかった横浜Fマリノス。三ツ沢で行われたサガン鳥栖との試合で、ようやく嬉しい初勝利となった。

ただ、モンバエルツ監督はフランスで戦術論の本を5冊も出しているバリバリの戦術家らしいのだが、正直言って横浜の守備組織はお世辞にも組織立っているようには見えなかった。一応の方向性としてはハイプレスで、出足自体は良いとしてもプレスの第一波を突破されてからのゾーンからマークに移行するタイミングが各選手によってバラバラで、ゾーンのあちこちにスペースが出来たり密集が出来たりと、かなりまだ選手が混乱しているなという印象を受けた。

昨シーズンのセレッソで、ポポヴィッチの更迭後に就任させたペッツァイオリが、それまでのワンツーポゼッションサッカーからいきなりゾーン・ディフェンスをチームに持ち込もうとして見事に消化不良を起こして再更迭されたという出来事があったが、2000年アジアカップのトルシエジャパンや、エジプト・スイス戦のオシムジャパンのように、組織サッカーというものはある日突然成熟するものであって、それまではかなり悲惨な内容が続く事は決して珍しくない。

この試合で横浜が勝利できたのは、齋藤学や兵藤が切れのある動きを見せていたのと、アデミウソンが中村の穴を埋めてボールキープと散らしの役割を果たせていた事に加え、鳥栖の豊田を中澤と栗原、ファビオの3人できっちりと抑えて仕事をさせなかった事が大きい。つまり組織よりも個人能力、頑張りで鳥栖を上回ったという事に過ぎない。

もちろん、J1は降格があるのでいつまでもクラブやサポーターは完成を待ってくれない。この試合のようにベテランの力を使って上手く勝ち点を拾いながら、自分の戦術に向いた選手を見出して育て、選手を入れ替えながらチームを成長させる手腕がクラブの監督には必要なわけで、フランスとは違ってゾーン・ディフェンスの素養に欠けた選手が多いJリーグで、どれだけ粘り強く教えこむことが出来るかに注目したいところ。

鳥栖については、開幕から公式戦3連勝と横浜とは逆にスタートダッシュを決めてはいたが、守備組織についてはユン・ジョンファン監督時代からはかなりアバウトになっており、ゾーンは一応形作りはするものの精密なディアゴナーレによるマークの受け渡しではなく、ある程度マンマーク色を強めた”なんちゃってゾーン”守備になっている。監督は変わったがサッカースタイル的にはあまり昨シーズン後半と変わらず、ここから新しい戦術を加えていくのか、このまま同じベクトルで成熟させるのかがこれからのポイントだろう。