マンチェスター・シティのホームで行われた第1レグを、アウェイのバルセロナが2-1でリードして迎えたカンプ・ノウでの第2レグ。
シティは1トップにアグエロを据えて2列目にミルナー、シルバ、ナスリを並べてカウンターで逆転を狙う形で臨んだが、現在絶好調のメッシ1人にディフェンスがズタズタにされ、GKのハートが15本ぐらいは飛んで来たように思う枠内シュートをことごとく防いだから何とか最小失点で終わったものの、チャンスの数から言えば6-0ぐらいの結果に終わってもおかしくないだけの差があった。
いつも観察している守備組織的には、バルサのほうは最終ラインの4人がゾーン的に守ってはいるが中盤は主に2列目の飛び出しに付いて行く緩いマンマークで、ネイマール、スアレス、メッシはボールを奪われた後のファーストディフェンスはするがゾーンのようにボックスを作る位置まで戻ったりはしない。まあ日本がこんな守備をやるとズタズタになるが、圧倒的な攻撃能力でナスリとミルナーを低いサイドに押し込め、アグエロとシルバはマスチェラーノのカバーリング範囲で封じてしまうのがバルサたる所以である。
対するシティは4-4-2のコンベンショナルなゾーン・ディフェンスを組んでいて、ボランチにヤヤ・トゥーレも戻って来て鉄壁な体勢になった・・・はずだったのだが、彼らにとって不幸だったのはそこに全盛期に近い状態まで復活したメッシがいた事だった。
何しろ一度メッシに前を向かれてしまうと、アタックに行けば股抜きで置き去りにされ、ディレイすれば足元に吸い付くドリブルに足すら出せず、2人がかりで囲もうとしたらディアゴナーレで空いたファーサイドのスペースに走り込むネイマールにピンポイントで浮き球パスを通されるという、何をやっても決定的なチャンスを作られてしまう絶望感。今のメッシの前では、スアレスもネイマールもアグエロも刺身のツマ以下の存在感である。
まあメッシのプレイがペジェグリーニやシティの守備陣にとって悪夢なのは当然だけど、日頃からゾーン・ディフェンスの習得を唱えている自分にとっても、守備戦術の存在意義を根底から否定されているようで砂を噛むように虚しくなる(笑)。正直、4-1-4-1や5-3-2で組織的に守ったって無理無理。そんな策を弄するよりも、メッシに細貝1人をスッポンマークに付けるほうがよっぽど効果的だろう。
シティにしてみれば、コンパニが不調でデミチェリスは安定感が無く、ヤヤ・トゥーレは失点の場面で戻りきれずにラキティッチをフリーにさせるなど、ディフェンスの主力が低調だったという理由はあるだろうが、たとえ彼らが完調であってもこの試合のメッシは止められなかっただろう。それだけに、同点に追いつけるわずかなチャンスだったPKに失敗したのは痛かった。
さて、今年のチャンピオンズリーグでメッシがいるバルサを倒せるチームはいったいどこになるのだろうか。あえてバルサの弱点を揚げるとすればやはりサイドの守備になるので、サイドに強力なクラックがいるバイエルンかレアルという事になるのだろうか。とにかく良くも悪くもメッシの調子次第になるのは間違いない。