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「ここがなでしこにとって世代交代の転機なのかもしれない」アルガルベカップ 日本-ポルトガル

この試合を見てちょっと思ったのは、佐々木監督はある意味とても恵まれた立場にいてるんだなあという事だった。

昨日はハリルホジッチ氏が直面する日本代表監督としての難しいミッションについて書いたんだけど、その意味で女子代表は国民的な注目度はそれなりに高いけど、お金を稼ぐ集金マシンではないのでスポンサー筋からの圧力は少ないし、清貧なイメージがまずあるので負けても叩かれる妬みの要素が無い。そしてメディアにとっても放映権料の安そうなアルガルベカップをゴールデン帯に放送できる優良コンテンツでもある。

ご存知のように佐々木監督は、ベストメンバーを出したデンマーク戦に敗れた後、このポルトガル戦ではメンバー11人全てを入れ替える文字通りの総とっかえをやってしまったのだが、いくら親善試合とはいえ男子代表だったらこの采配は不可能だよなあと思ってしまった。そして結果的には3-0でポルトガルに快勝し、佐々木監督のギャンブルは成功した。

確かにポルトガルはそれほど強いとは言えなかった。守備は典型的な4-4-2のゾーン・ディフェンスで、コンパクトなゾーンを丁寧に上げ下げして日本の攻撃から山のようなオフサイドは取ったものの、スカルトゥーラとディアゴナーレの連動性が甘く、後半になって日本のボランチがバイタルに上がってボールを受けるようになると対応が後手に回り、中に引っ張られては外側が空くという悪循環に陥ってしまった。

攻撃でも日本とさほど身長差がないのでロングボールは使えず、ゾーン・ディフェンスの中盤が逆サイドを上げずにフラットなままなのでカウンターで人数がかけられず、各選手はそれなりにキープ力やドリブル能力はあるのだが、いかんせん攻撃を開始する位置が低くて日本のミス絡みでしかチャンスが作れなかった。

そういう日本と相性の良かった相手ではあるが、前半から狙い通りのサッカーをやり切って3-0で勝ったことはとても大きい。なでしこもポルトガルと同じくゾーン・ディフェンスではあったのだが、より水平方向をコンパクトにして前線の選手もプレスバックに参加し、複数の選手でスカルトゥーラをしてより積極的にボールを奪いに行く組織が出来ていた。

個人としては、まるで宇佐美を思わせるようなドリブルからのゴラッソを決めた横山選手の活躍はもちろんだが、何よりボランチで先発した宇津木と上辻のコンビネーションが非常に良かったように思う。

特に宇津木はまさに第一ボランチとしてのお手本のようなプレイで、中盤での落ち着いたボールキープからサイドチェンジや縦パスを小気味良く通し、上辻は広範囲に動き回って攻守でカバーする第二ボランチとしての役割をしっかり果たし、これならいつまで経ってもなかなか機能しない宮間のボランチよりもよほど先発にふさわしいと思ってしまった。

体格やパワーが無いなでしこジャパンの場合は、やはり全体が終始コンパクトでないとチームが機能せず、そのためにはボランチの位置には宮間のようなアーティストよりも澤のような基本に忠実なミスの少ない選手がふさわしい。その意味でこの試合の宇津木には澤の後継者となれる可能性を感じたように思うのだが、果たして佐々木監督の評価はいかに。

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