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「やはり選手のクォリティと戦術の緻密度は反比例する」欧州CLベスト16第1レグ シャルケ-レアル・マドリー

一昨日観戦したPSG対チェルシーの試合でも思ったのだが、やはり個人能力の高い選手を揃えているチームは下手に戦術組織で縛るよりもいかにして気持よくプレーさせる事のほうが重要なのだなと、この試合のレアル・マドリーを見て改めて確信した。

5バックで後ろが詰め詰めのシャルケに比べるとレアルのポジショニングは非常にゆったりしていて、縦はさすがに多少コンパクトさは保っているものの、横幅は試合を通じてワイドなまま。

それでも個人にキープ力があるのでシャルケの選手が2人で来ても簡単にはボーツを取られないし、逆にそうやってシャルケがボールサイドに人を集めて来ると、サイドチェンジで逆サイドの人がいないほうに大きく振ってから改めて攻めの緒を作る。

で、クリロナやベイルが前を向いてドリブルし始めると当然シャルケはそこに人を突っ込むため、中盤のポッカリ空いたスペースにイスコやクロースが入り込んでセカンドボールを拾い、そこからピンポイントで前線へスルーパスを合わせてくる。

現代におけるサッカーは、陣形をコンパクトにして攻守の切り替えを早くし、数的優位を作る戦術が必要と呪文のように唱えられているが、結局ピッチの大きさは変わらないのだからどこかでコンパクトにすればどこかにスペースが出来、どこかで数的優位になればどこかで不利が出来るわけで、イーブンでワイドなポジショニングが保てる個人能力があればそれに越したことはないという身も蓋もない真理を見せつけられているようで腹立たしい。

とは言え、この試合の序盤はどちらかと言うとシャルケのペースだった。レアルはクリロナがトップや右サイドへと自由に動き、内田のサイドはベンゼマやイスコ、マルセロが入れ替わり立ち代り攻めて来る状況になってはいたが、インサイドハーフのヘーガーと右CBのヘヴェデスとでローテーションしながら上手くマークを受け渡して対応。

そしてボールを奪うと内田にボールが集まり、そこからマルセロが上がった裏のスペースを突くヘーガーに縦パスを合わせたり、それと連動して引いてくるフンテラールにクサビを入れたりと、攻撃の回数は少ないもののフンテラールがカウンターから惜しいシュートを放つなど上手くリズムを掴んでいた。

シャルケにとって不運だったのは、攻撃を牽引していたフンテラールが前半早々に怪我で交代してしまった事と、26分にカルバハルのドリブルからあっさりクロスを上げさせてしまってクリロナに先制点をワンチャンスで決められてしまった事だろう。DFがボールウォッチャーになっていて、サイドから中に寄って来たクリロナを誰も見ていなかったもったいないボーンヘッドだった。

後半からシャルケは前半のうちは守るだけだった左SBアオゴが攻撃に参加し始め、25分ごろにはレアルのDFラインをギリギリ抜けだした内田がボールを落としてプラッテがバーに当てるシュート、その跳ね返りを内田が押し込む決定機を作るが、シュートはマルセロの背中に当たって決まらず。

34分の追加点も、クリロナのドリブルを内田が何とか足で触ってコントロールさせないようにしたが、それを拾ったマルセロがゴラッソなゴールを決めたもので、これも完全にシャルケの人海戦術を個人能力で超えてしまったゴールである。こういう場面ならシャルケにもたくさんあったわけで、そこを決められるかどうかが真に大きな差なのだろう。

内田はまあ2点目の場面以外に明らかにやられた場面は無かったし、今の彼に出来る事は十分やりきったのではないか。第2レグはレアルホームなので状況は絶望的だが、先制点を取れれば多少はムードも変わるはず。何とか奇跡が起こって欲しいところだね。

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