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「香川が蘇らせたドルトムント本来の姿」ドイツ・ブンデスリーガ第20節 フライブルク-ボルシア・ドルトムント

反転攻勢を期したはずのウインターブレイク明けなのに2試合でまだ勝ちが無く、今度こそ本当の崖っぷちとなってしまったドルトムント。しかし香川がトップ下で復帰したフライブルク戦では、一気に3-0と全盛時に戻ったかのような得点力を見せつけて快勝を飾った。

ドルトムントがここまで苦しんだ不調は、多分に構造的な理由があった。まず2011-2012シーズンにゲーゲンプレッシング旋風を巻き起こしてリーグではバイエルンを打ち破るぐらいの強さを見せていたのだが、チャンピオンズリーグでは特にアウェイで前がかりになってはカウンターを食らって負けるパターンが多く、ゲッツェや香川といったテクニシャンが居なくなったのもあって、低めのプレッシングからロイスの飛び出しを活かすサッカーに切り換えてチャンピオンズリーグでも結果を残せるようになった。

しかし逆にリーグでは相手が引いてしまってロイスやオーバメヤンが活きるスペースが無くなり、前線に基点になりつつプレスもかけられるレヴァンドフスキが移籍してしまった事で全く前線で溜めが作れず、しかも前線のメンバーであるロイス、オーバメヤン、インモービレ、ラモス、ムヒタリアンの誰を組み合わせてもプレッシングが不十分なため、本来のゲーゲンプレッシングも機能しなくなってしまった。

今シーズンは特に、クロップが引いた相手を打開するためにゲーゲンプレッシングの復活を狙い、ラインを相当高く上げる形にシフトしたのだが、やはり誰を使っても前線で満足な基点が作れない上に、ボランチでパスを配給できるギュンドアンが怪我をしてしまって香川が低い位置でプレイせざるを得なくなり、DFからの無理なロングボールや縦パスが跳ね返されて裏を取られる形が頻発、一層チームの守備が不安定になってしまった。

しかしこの試合では、香川が今までのような低い位置でパスをさばくボランチ的な役割ではなく、ゲームメイクはギュンドアンとシャヒンに任せ、ほぼ2トップの位置でファーストディフェンダーとしてプレスをかけまくり、高い位置でボールを受けてロイスとオーバメヤンに繋ぐ攻撃の基点になっていた。プレスで相手のパスコースを限定させる事で全体の連動性を高め、キープ力でラインを押し上げて整える時間を作るという二重の意味で香川はチームに貢献していたと言える。

もっとも、それはフライブルクがドルトムントに対して引いて守るのではなくて似たようなゲーゲンプレッシングで向かって来てくれたという点は大きい。そしてドルトムントも試合序盤はプレスの連動がおっかなびっくりだったが、前半9分と早い時間に相手のプレゼントによって先制点が取れ、気持ちに余裕が出来た効果もあっただろう。これからどんなチームと戦ってもこんな風に上手く行くとは考え難い。そして香川自身も、かつてのゴール前での冷静さ、相手の動きを読んで瞬時に判断を変えられる柔軟さはまだまだ取り戻せていない。

それでも、最後は香川のアシストからオーバメヤンが決めた3点目の、相手ゴール前での流れるようなパスワークは、ドルトムントが強かった時代に何度も目にした、しかしシーズン前半には全く見られなかった光景だった。そのゴール後にGKのヴァイデンフェラーまで加わって喜んでいた姿を見ると、いかにそれを皆が待ち望んでいたものだったかというのが良く分かる。とにかくこの流れを継続する事。今ドルトムントがやるべき事はそれだけだ。

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