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なぜマスコミはアギーレ監督の八百長疑惑を騒ぎ立てるのか

アギーレ監督に対する八百長疑惑が報じられてからというもの、スポーツマスコミのエスカレート度合いは日に日に激しさを増し、もはや有罪は確定、解任は規定事項のような書き方をされる有様です。

そもそ告発というのは捜査機関に対して犯罪を申告し処罰を求める意思表示であって、起訴に持って行って公判を維持し、裁判で有罪が確定するまでは何の罪も発生しません。「推定無罪だけど休養させろ」とか「黒じゃないグレーだけど協会の大甘裁定」などと無茶苦茶な論理で罪人に仕立てあげようとするマスコミの姿勢には吐き気がします。

まあ、スポーツマスコミなんてのはマスコミ本来の仕事である「真理、真実の追及」とは正反対の、火のない場所に煙を起こして「火事だぞ~!」と騒いで野次馬を寄せ集め、そこに屋台を出して酒を売りさばくような守銭奴商売に成り下がっているので、面白おかしく騒ぎ立てる姿勢に関しては今更驚きはしません。

ただ、協会がワールドカップに対する取材パスの発行権を握っている以上、立場の弱いマスコミは協会の意に反する記事をそうそうは書けないはずで、その事情を鑑みると今回のマスコミ総バッシングについてはある程度協会内部からのリークやお墨付きの姿勢があるのではないかと思っています。

理由の1つは、ダーティーなイメージを嫌うスポンサーから圧力をかけられている点。これはマスコミの記事にも「協会にはスポンサーからの問い合わせも届く」と内部からのリークを思わせる文章がはっきり書かれています。しかもアギーレはブラジル戦をサブ組のテストに使って惨敗したという”前科”があるので、以前からスポンサー側から不興を買っている事は想像に難くありません。

もう1つは、代表監督人事を一手に握り、ブラジルW杯でザックジャパンが失敗しながらも責任を取らずに専務理事という要職に留まっている原さんを快く思っていない人たちの存在。ザックに続いてアギーレでも失態になったとあれば、さすがに原さんの影響力低下は免れず、大仁会長を追い落とす材料にもなり得ます。

スポンサーと権力闘争という、サポーターの気持ちや日本代表の強化とは全くかけ離れた”金と力”の政治的な論理で今回の騒ぎが行われているという現実も、またこちらの気分を甚だ害する要因になっています。もちろん、本当にアギーレ監督が八百長に加担していれば解任すべきですが、個人的には彼が直接八百長に関与した可能性は低いと考えています。

理由としては、会長は降格による金銭的な被害を当然受け、選手も降格によって減給や解雇の問題が発生しますし、よほどの一流選手以外は金銭的に将来が不安な立場であり、八百長を受けるメリットは小さくありません。しかしアギーレのようなある程度実績がある監督であれば、降格で首になっても世界中から次が回ってくる仕事だし、自分が引退を決めるまではずっとやれる商売です。わざわざ八百長で残りの人生を棒に振るのはリスクが大きすぎます。

ただし消極的な黙認はあったかもしれません。下手に関与して知っていたという証拠を残すよりは知らぬ存ぜぬで通したほうが安全でしょうし、逆に会長からすると証拠を残して口止めさせるためにアギーレ自身が知らないうちに口座に振り込んだのかもしれません。アギーレはその部分を出頭時にしっかり説明する必要はあるでしょう。

残念ながらスペインやイタリアには八百長が蔓延しているのは公然の秘密ですし、自転車レースを見て来た人間にとってはオペラシオン・プエルト問題や、ランス・アームストロングとUCIの密約などを見ても、今回のサラゴサが体の良いスケープゴート、警察が与し易い得点稼ぎの標的にされている可能性は高く、スペインクラブの監督であれば誰でもアギーレと同じ疑惑をかけられるのではないかと思います。

とは言え、事態がこうなってしまった以上アギーレ監督にとってプラスポイントを稼ぐ方法は1つしかありません。アジアカップで結果を残し、日本代表にとって必要不可欠な存在であると広く認識させる事です。逆に早期敗退を喫してしまうと、正反対のベクトルへと転がっていくのを止める事は難しくなります。アギーレ監督にとっては、どちらにおいても非常な努力が求められる事になるでしょう。それが良い結果につながる事を期待したいです。

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