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「本田が取り組んでいる新しいテーマが見えた?」イタリア・セリエA第9節 カリアリ-ミラン

リーグ戦開始からの好スタートにすっかりブレーキがかかり、フィオレンティーナ戦に続いてカリアリとの試合でもパッとしない内容での連続ドローに終わってしまったミラン。

苦戦の理由は、まず中2日というスケジュールで、ただでさえターンオーバーをする余裕が無くて疲労が溜まりだしているところ。本田とのコンビネーションが冴えてここまで全試合出場をしているアバーテも、さすがにこの試合では疲れからか判断のミスが目立ち、ミランの失点は右サイドで彼が中途半端に寄せたせいでパス交換で抜かれてしまい、フリーでのアーリークロスにイバルボが合わせたもの。

そして逆サイドのデ・シーリオも出来が悪く、オーバーラップからの攻撃参加は良いとしても守備のポジショニングがバラバラでエル・シャーラウィと重なる事が多く、イバルボにさんざんサイドを蹂躙されてピンチを作られまくって3点ぐらいは取られてもおかしくなかった出来で、まさにイタリアの酒井高徳と呼びたいバタバタぶり。

もう1つの理由は、やはりミランの攻撃が相手に研究され始めている点。ミランの戦術の特徴は相手ボール時にインサイドハーフが高いポジションを取ってプレスに参加する事で、DFラインがあまり高くない分をその2人の運動量で補いつつ、本田ともう1人のウイングと連携して基点を作る部分にあるが、今は本田のところが相当警戒されて2人がかりでマークが常時付き、パスの出しどころを失って特にムンタリがミスをしまくり、カウンターから1ボランチのデ・ヨングの両側に出来たスペースを使われるという悪循環になってしまっている。

ならば本田以外の前線で基点が作れれば良いのだが、この試合でもトーレスは空気でメネズは相変わらず足元で受けてのドリブルしか興味がなく、エル・シャーラウィも復調とは程遠い出来な上にデシーリオの守備力に足を引っ張られて高い位置で働けずと、前線も中盤も機能不全に陥っている。

そんな中で本田だけは淡々と攻守に働きかけ続け、特に攻撃ではボールを持ったらシザースやフェイントをかけたり右足でクロスを上げたりと、何とかしてカリアリの執拗なマークを無効化しようと奮闘していた。そんな場面を見続けていると、もしかすると本田が自分に課している新しいテーマとは、実はこの事なんじゃないかという気がして来た。

ブラジルW杯では、日本は個の力で劣っていてもショートパスを中心としたコンビネーションで世界に対抗できると信じ、本田が代表メンバーを引っ張った挙句の玉砕。コンディションや気候、メンタルの問題はあっただろうが、ヤヤ・トゥーレやハメス・ロドリゲスといった圧倒的な個の前に日本は萎縮し、脆い自信が砕けたせいで自滅したと言って良い。

単純に日本人の体格ではフィジカルやスピードの点でいくら頑張っても彼らには対抗できない。ではどうするか。おそらく本田の出した答えは、スキルとテクニックで1対1を制する事に尽きると思ったのではないか。ドリブルのスピードが無ければ緩急の変化で、リーチの差はタイミングを外す事で抜いたりと、最近の本田のプレイにはそういった工夫、試行錯誤が詰まっているように思う。

本田の能力を持ってすればムンタリやポーリを蹴散らして中盤に君臨し、王様然と攻撃の指揮をとることは可能だろうが、今はあえてその道を封印し、マーカーがいくら粘着しても前線でボールを待ち続け、1対1を制して点を取る。その積み重ねで自分と日本代表が世界の上位で戦う拠り所を作ろうとしているのではないか。何となく、個人的にそう確信させられる試合だった。

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